« 行革事務局担当官を招き 意見交換会を開催 | メイン | 「信託法改正要綱試案」に対する意見書を提出 »

2005年08月08日


民主党「公益法人制度改革案」に対する意見書を提出


 民主党が7月13日に公益法人制度改革案(2005年中間報告)を決定、発表したことについてはすでにお知らせいたしましたが、公法協では、これを受け、法制対策委員会及び税制対策委員会で同改革案について検討、その結果を意見書としてとりまとめ、8月8日、民主党NPO公益法人制度改革プロジェクトチーム座長・石毛鍈子及び同党税制調査会会長・中川正春の両氏あて提出いたしました。

 意見書の要点は次のとおりです。


1 公益法人制度改革の視点

 公益法人制度改革の視点の一つとして「民間非営利活動の活性化」を挙げる点は賛成。しかし、もう一つの視点として「官業公益法人の見直し」を挙げる点は疑問。なぜなら、官業公益法人の諸問題(不要不急の補助金交付、事業独占の容認、官益の保持、天下り等)は、まさに典型的な行政改革の問題として解決されるべき問題であって、公益法人制度そのものの問題ではない。

2 法人制度について

(1) 税制支援非営利法人

 民主党案では、非営利法人のうち一定のものを「税制支援非営利法人」とするとしているが、公益性を有する非営利法人を民事法上明確に規定することなしに専ら税制上の観点からうんぬんするのは問題。公益性を有する非営利法人はまず民事法上明確に位置付けられるべきである。

(2) 判断要件

 「税制支援非営利法人」の要件の一つとして挙げられているパブリックサポートテストは問題。企業や富裕層など一者又は少数者からの寄附による公益法人はすべてこれを充足しないことになる。

(3) 適正運営確保のあり方

 「過大な内部留保の蓄積を防ぐため、資産の一定割合を定期的に公共性のある事業へ支出することを義務付ける」、すなわちペイアウトルールの導入を、という考え方は疑問。過大な内部留保は好ましくないが、とはいっても、公益法人もゴーイングコンサーンであり、一定の内部留保はむしろ必要。内部留保の水準は、双方向から見た合理的な算式により決められるべきである。ペイアウトルールを導入すればよいというものでもないし、妥当なペイアウトレシオを設定できるとも思えない。

3 税制について

 「本来事業に属する収益事業の非課税」「公益性を有する非営利法人には寄附金優遇税制連動」「5年間の繰越制度」など民主党案は画期的。高く評価されるが、次の諸点もご考慮いただきたい。

(1)年末調整の適用(年末調整で寄附金控除ができるようにする)(2)ボランティア税制(ボランティア活動に要した交通費、用具費など実費負担額を寄附金控除の対象とする)(3)地方税の寄附金控除(所得税上寄 附金控除とされたものは、地方住民税上でも連動して寄附金控除対象とする)。

〈以下、「意見書」全文〉


------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

平成17年8月8日

民主党NPO・公益法人制度改革プロジェクトチーム
座長 石 毛 鍈 子 殿

民主党税制調査会
会長 中 川 正 春 殿

財団法人公益法人協会
理事長 太 田 達 男

民主党・公益法人制度改革案(2005年中間報告)について


 日ごろは、私ども公益法人を含む市民社会組織の非営利公益活動につきまして、ご理解とご支援をいただき、厚くお礼申し上げます。

 さて、去る7月13日付けにて発表されました表題改革案(以下改革案)につきまして、弊公益法人協会では、内部の法制対策委員会および税制対策委員会で検討させていただきました。

 ここにそれらの検討結果を取りまとめ、今後民主党案として正式に決定される際のご参考として、下記のとおり見解を披見いたします。

Ⅰ はじめに

 今回の公益法人制度改革に求められる視点は、民間公益活動が担う公共の空間を拡大し充実させることが21世紀の社会において不可欠との認識に立って、そのような活動を担う組織を、いかに国として制度上支援するかという点であると私たちは考えております。

 したがいまして、改革案におかれても、今回の公益法人制度改革に求められるものの一つとして、「(2)多様な市民ニーズを実現し、活力ある社会を構築するために、民間非営利部門を自立的に発展させる土台をいかに作るか(民間非営利活動の活性化)」を挙げておられる点には全く同感です。

 しかしながら、もう一つの視点として掲げられている「(1)現行公益法人について指摘されている諸問題に適切に対処する(官業公益法人の見直し)」についてはいささか疑問なしとしません。

 官業公益法人に指摘される諸問題(不要不急の補助金交付、事業独占の容認、官益の保持、天下り等)は、正に典型的な行政改革として解決されるべき問題であって、公益法人制度そのものの問題ではありません。制度をどのように改正しても、弛緩した行政の意識と慣行を是正しなければ根本的解決にはなりません。

 従来、公益法人イコール行政の外郭団体として多くの市民から誤解された理由は、あまりにも官業法人に多くの問題が集中したためです。貴党が公益法人制度改革に求められるものとして官業公益法人の見直しを第1に掲げる結果、このような公益法人一般に対する市民の誤解と不信を助長する結果になることを懸念します。すなわち、今回の改革の基本的な視点として上記(2)を大きく掲げていただきたいと考えます。

Ⅱ 法人制度について

 改革案において新たな非営利法人をできるだけ、純化するための工夫をされていることは多とします。

 たとえば、残余財産も非分配を貫く、中間法人制度は別に存続させる、拠出金制度を別法にするなどです。

 しかし、いわゆる二階部分の非営利法人の仕組みが税制のみに直結した構成がとられており、公益性という観点が欠落していることに大きな違和感を感じます。

 税制はあくまで、結果として考慮されるべきものであり、まずどのような法人であるべきかということが重要で、これは優れて私法である非営利法人法の領域に属することと考えます。

 以下問題と考える点のみ付言します。

 1 税制支援非営利法人(いわゆる二階部分)

改革案は残念ながら「公益性」という視点が全く欠落しています。すなわち、非営利法人というものは、剰余金(改革案の場合は加えて残余財産)の非分配という法技術的な要件で営利法人と区分した極めて広範囲な法人領域です。そのなかには、公益を目的とするもの、共益を目的とするもの、実質私益を目的とするもの、財産の独立性を確保する器としてSPC(特別目的会社)的に利用するものなど多様な活用方法が考えられます。

 私たちはこのように想定される多様な目的の非営利法人中、公益を目的とする非営利法人は、設立目的、事業分野、ガバナンスや透明性などの規律、社会からの監視システムなどの点において、他類型の法人と大きく異なる規範が必要と考えています。

 このように社会的責任が最も大きく、適用される規範も大きく異なる公益を目的とする法人はその他の法人から、法制度として私法上明確に区分すべきであります。

 寄付者、ボランテイア、受益者、納税者など社会一般の市民が容易に識別できるような仕組みが不可欠と考えています。税制支援はそのような社会的責任の重い、規律のしっかりした法人に対する、政策的な支援の一つであって、すべてではありません。

 そもそも、第三者機関は税制支援が妥当かどうかを判断する機関ではありません。個々の非営利法人の公益性について判断する機関です。したがって、第三者機関により「公益性」があると認定された法人の名称として、税制支援だけをクローズアップさせる「税制支援非営利法人」という名称は是非避けていただきたいと考えます。公益性を示す名称(例 公益社団法人、公益財団法人など)とその独占使用および公益性にかかわる事項について法人登記への反映などが必要と考えます。

 2 判断要件

改革案では判断要件の(4)としてパブリックサポートテスト(PST)を満たすこととしています。

 しかし、多くの寄附者からの寄附を要件とするPSTを採用すると、企業や富裕層など一者または少数者からの寄附による公益法人はすべてこれを充足しないことになります。助成財団の大部分は公益性がないということになります。言うまでもなく、一者または少数者からの寄附を除外する理由は全くなく、むしろこれらを含めて広く民間資金の公益的活用を支援することが必要です。

 米国では内国歳入庁が認証した公益性非営利法人(charitable non-profit)はすべて免税団体であり、同時に一定の寄附金支援税制(個人、法人それぞれ所得の30%、10%控除)が適用されます。その上で多くの市民からの寄附によって成り立つ団体に対しては、PSTを充足すれば、個人の控除枠に限り30%から50%に上乗せするという2段階の制度です。いきなり、PSTをベースから導入することには反対せざるをえません。

 3 適正運営確保のあり方

改革案では適正運営確保のあり方にかかわる要件として、「過剰な内部留保の蓄積を防ぐため、資産の一定割合を定期的に公共性のある事業へ支出することを義務付ける」(ペイアウトルール)としています。

 たしかに、継続的、安定的公益活動の実施を旨とする公益法人が過剰な内部留保を保持することは好ましくありませんが、一方では公益法人もゴーイングコンサーンであり財務の健全性から見て一定の内部留保はむしろ必要です。

 したがって、私たちはこのように双方向から見た合理的な算式により、一定額以上の内部留保蓄積を禁止することが必要と考えています。

 この場合、支出額から押さえるペイアウトルールも有効な方式ではありますが、日本の場合、超低金利の下投資リターンが極めて低い現状にあって、元本を毀損しない範囲で意味のあるペイアウトレシオを設定することは困難ではないかと考えます。

Ⅲ 税制について

改革案の提案する新税制の多くは画期的なものであり、民間公益活動を推進、支援する観点から極めて有意義と評価します。

 「本来事業に属する収益事業の非課税」「(公益性のない)一般非営利法人の収益事業以外の非課税」「すべての公益性非営利法人に対する寄附金控除の連動」「5年間繰り越し制度」「すべての公益性非営利法人に対する相続財産寄附、現物寄附の非課税制度」「所得税・地方税の1%相当寄附制度導入」など意欲的な新しい考え方を示されたことに敬意を表します。

 以下、私たちが関係方面に要望している点で、改革案からもれている事項のみをご説明します。

 1 年末調整の適用

個人寄附金の所得控除ないし税額控除については、私たちは大部分の給与所得者が確定申告制度に不慣れな現状を考慮し、他の控除項目同様、年末調整による控除ができるよう要望しています。この場合一定額以上の控除については確定申告を義務付けることも考えられます。なお、所得控除か税額控除かという点についてはそれぞれ一長一短があり、なお、慎重にご検討いただくようお願いします。

 2 ボランティア税制

私たちは、公益法人等にボランティアが協力した場合、交通費、用具など実費負担額に相当する金額を寄附金控除の対象とするよう要望します。

 3 地方税の寄附金控除

現在の地方税では公益法人や特定非営利活動法人に対する寄附金は全く住民税から控除されません。

 今後ますます地域における民間公益活動の役割が期待される今日、私たちは住民税についても所得税同様の措置を講ずるよう要望します。

以上