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2005年07月04日


政府税調「基本的考え方」に関する意見書(公法協・税対)


7/4、公法協・税対が連名で意見書を提出
政府税調 「基本的考え方」 に関する意見書を提出
― 課税上の諸論点、寄附金税制等について ―


 (財)公益法人協会(太田達男理事長)並びに 公益法人税制対策委員会(委員長:片山正夫・(財)セゾン文化財団常務理事)は、政府税制調査会が発表した「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」に関する意見書を取りまとめ、7月4日、政府税制調査会あて提出しました。

 意見書の主なポイントは次のとおりです。

●非営利法人に対する課税:

 一般的な非営利法人について、会費を除き原則的に課税とすることは、非営利法人の活動を萎縮させるおそれがあり、今後慎重な検討が必要。

●収益事業の範囲:

 包括規定方式の場合は、課税・非課税の境界線を一律に定めることは困難。課税根拠及び課税範囲が具体的に明らかで、透明性が高い現行限定列挙方式を採用するのが適当。

●軽減税率及びみなし寄附金制度:

 双方は一対のものとして捉えられるべき。収益事業からの収益を本来事業に繰り入れる場合は100%の損金算入が認められてしかるべき。

●利子・配当等の金融資産収益:

 「公益活動を支える不可欠な財源」であり、従来同様非課税とすべき。

●寄附金税制のあり方:

 寄附金優遇法人の適用期間を設けることは不要。第三者機関の事後チェック等により公益性の判断を取り消された法人は、自動的に寄附金優遇法人として資格を失う、と考えられるからである。

●その他(提案、個人寄附):

 ・年末調整制度の導入。
 ・ボランティア優遇税制の導入。

 以下が「意見書」全文です(PDF形式は こちら )。



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「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」
に関する意見書



平成17年7月4日
財団法人公益法人協会 理事長 太田 達男
公益法人税制対策委員会 委員長 片山 正夫


 政府税制調査会の基礎問題小委員会及び非営利法人課税ワーキング・グループ(合同会議)より6月17日、「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」(報告書)が発表されました。

 報告書は、4月15日以来の合同会議での議論の大要をとりまとめたもの、とありますが、その内容はわが国経済社会の構造変化を踏まえた本格的なものであり、短期間にこのような報告書をとりまとめられましたご努力に敬意を表するものであります。

 以下、報告書の基本的部分について意見を申し述べます。

 なお、記載の順序は必ずしも報告書どおりではありません。また、文中囲みの箇所は、弊協会及び弊委員会において報告書の要点を摘記したものです。


1 改革の基本的方向性について


 「あるべき税制」の一環として、「新たな非営利法人制度」とこれに関連する税制を整合的に再設計し、寄附金税制の抜本的改革を含め、「民間が担う公共」を支える税制の構築を目指そうとするものに他ならない。


この方向性に全面的に賛意を表明します。

 私どもは、今般の制度改革は、日本社会における市民の自発的な公益活動を正当に評価し、これを促進、支援するような改革であるべき、ということをかねがね主張してまいりました。「民間が担う公共」を支える税制の構築を、とする考え方はまさに私どもの主張に合致したものであり、今後の検討におきましても、ぜひこの考え方を堅持することを切望いたします。


2 非営利法人に対する課税のあり方について

 (1) 「公益性を有する非営利法人」(a)に対する課税


・「公益性を有する非営利法人」については、「第三者機関」による公益性の認定をもって、法人税法上の公益法人等として取り扱うこととすべき。

・現行制度同様、基本的にすべての収益を非課税とすることが適当。ただし、営利法人と競合関係にある事業は課税することとすべき(収益事業課税)。

 公益性が第三者機関により認定された非営利法人について収益事業からの収益を除くすべての収益を非課税とすることは当然ですが、営利事業と競合するという観点から収益事業に課税する考え方については、後述するように異論があります。

 (2) (a)以外の非営利法人に対する課税


①「専ら会員のための共益的事業活動を行う非営利法人」(b)が受ける会員からの会費については非課税とする方向で検討。

②「公益性を有する非営利法人」及び「専ら会員のための共益的事業活動を行う非営利法人」のいずれでもない非営利法人(c)については、営利法人と同等の課税とすべき。

ア 上記の考え方は、これまでのわが国の非営利法人課税に関する原則的な考え方を覆すもので、このような考え方をとることが妥当かどうか疑問なしとしません。

 わが国では従来、非営利法人に関しては、唯一の例外である中間法人の場合を除いて、法人税法施行令第5条に規定する収益事業以外は非課税とされてきました。認可地縁団体、管理組合法人、労働組合法人、国家公務員等の職員団体などに対する税制がそれです。一般的な非営利法人について(b)の場合の会費を除き原則的に課税とすることは、「民間非営利部門による自発的で多様な法人活動を容易にする」とした有識者会議報告書(「はじめに」)の意図に反し非営利法人の活動を萎縮させるおそれがあり、なお今後慎重な検討が必要であると考えます。

  イ 仮に一般的な非営利法人のうち(b)について①のような方向を取るとした場合は、会費と同様の性質を持つ寄附金、補助金、助成金等も非課税とすべきと考えます。

 (3) 特別法に基づく非営利法人等との関係


①「特別法に基づく公益法人等」に対する課税については、当面、現行と同様の取扱いとすることが考えられる。ただし、公益法人等に共通する課税上の諸論点について見直しを行う場合には、制度の整合性に配慮した検討を行うべき。

②地縁団体や管理組合法人等については、上述(b)の課税上の取扱いと整合性が確保されるように検討する必要がある。

③「人格なき社団等」には、公益的活動や共益的活動を行うような団体から、営利的活動を行う団体まで様々なものがある。その実態に配意しつつ、課税のあり方の見直しを行う必要がある。

 ①は当然と考えます。

 ②も当然ですが、上記(2)アで述べた点をまず顧慮すべきであろうと考えます。

 ③「人格なき社団等」に関しては、新たな非営利法人制度における(a)(b)(c)に対する課税とパラレルに、という趣旨のようですが、これについても、上記(2)アで述べた点を顧慮した上で慎重な検討を行う必要があると考えます。

3 公益法人等に共通する課税上の諸論点について

 (1) 収益事業の範囲


・公益法人等が行っている事業の実態を調査し、これに基づいて、課税とされるべき収益事業の範囲を根本的に洗いなおすべき。その際、限定列挙されている収益事業の範囲を拡大するとともに、現行の収益事業の範疇であっても一部非課税とされている特定の事業内容についてその妥当性を再検討すべき。

・課税対象を「対価を得て行う事業」というように包括的に定めた上で一定のものを除外するという考え方もある。その制度的可能性について検討することも、今後の課題となろう。

 ア 収益事業の範囲を見直すに当たって包括規定方式の可能性も検討、とされていますが、包括規定方式の場合は、課税・非課税の境界線を一律に定めることは困難であり、個々の事業ごとに細部にわたり課税か非課税かを吟味する作業が必要になると考えられます。解釈上の問題が生じること、実務上のコストが膨大なものになるのは必至です。これらの点からすると、課税根拠及び課税範囲が具体的に明らかで、透明性が高い現行限定列挙方式を採用するのが適当と考えます。

 イ 収益事業の範囲を検討するに当たっては、公益法人等の本来事業(当該法人の設立目的たる事業)との関係を整理することがぜひ必要と考えます。

 現行税制では、公益法人の本来事業でも、税法上の収益事業に該当する場合は課税とされていますが、これは不合理です。

 公益法人等が外形上営利法人と同様の事業を行うことは珍しいことではありません。例えば、芸術文化、教育、福祉などの分野において。しかしながら、公益法人等の場合には、事業の性質上、また、地域の事情等から、営利事業としては成り立ちにくい事業を行っているのが実情であり、単に外形上の理由から営利企業との競合と見るのは見当違いというべきです。

 公益法人等の本来事業は、外形上営利事業と類似することがあったとしても、米国税制におけるように非課税とすべきと考えます。次項の「みなし寄附金制度」もこのように考えてこそ理屈が通るというべきです。

 (2) 軽減税率及びみなし寄附金制度


(軽減税率)

 できる限り営利法人の基本税率(30%)との格差を縮小し、営利法人と同等の税率とすることを目指すべき。

(みなし寄附金制度)

 収益事業からの利益が本来事業に充当されている限りにおいてその損金算入限度額を拡充すべきとの考え方がある一方、収益事業に係る課税所得が減殺され、収益事業課税の趣旨が歪められているとの考え方がある。

 報告書は、以上のように述べた上で「今後更に検討」としていますが、軽減税率及びみなし寄附金制度は一対のものとして捉えられるべきと考えます。すなわち、みなし寄附金制度の趣旨からすれば、収益事業からの収益を本来事業に繰り入れる場合は100%の損金算入が認められてしかるべきであり、このような措置が手当てされるのであれば、それと引き換えに税率を営利法人並みとすることも妥当と考えます。

 (3) 利子・配当等の金融資産収益に対する課税


 金融資産収益については、経済的価値においては金銭貸付業から生じた所得と同じであること等から一定の税負担を求めるべきとの考え方がある一方、公益活動を支える不可欠な財源であり、政策的な配慮が引続き必要との考え方もある。今後そのあり方について検討を進めていく必要がある。


 金融資産収益を金銭貸付業から生じた所得と同等と見るのは論外です。金融資産収益は、後段にあるように「公益活動を支える不可欠な財源」であり、従来同様非課税とすべきです。

4 寄附金税制のあり方について

 (1) 国税における寄附金税制

a 「新たな非営利法人制度」の下での寄附金税制


(寄附金優遇法人の範囲)

 制度の一貫性を確保するとの観点から、「第三者機関」が判断した「公益性を有する非営利法人」をもって寄附金優遇の対象法人とするとともに、当該法人が行う公益的事業を寄附金優遇の対象事業とすることが合理的。

(適用期間)

 申請手続の事務負担等に配慮すれば、現行(2年間)よりも長めに設定する方向で検討することが適当。

ア 公益性を有する非営利法人の公益性に差をつけることはできないにもかかわらず、敢えて官の判断により公益性に差をつけてきたのが従来の寄附金税制でした。今回、「制度の一貫性を確保するとの観点」から、寄附金優遇法人の範囲を上記のように第三者機関の判断に連動、としたことは優れて妥当な考え方と評価します。ちなみに、英米においても、法人税法上優遇される公益性を有する非営利法人は、同時に寄附金優遇法人として扱われています。

 イ 寄附金優遇法人の適用期間を設けることは不要と考えます。なぜなら、上記のように、寄附金優遇法人を第三者機関の判断に連動させるのであれば、第三者機関の事後チェック等により公益性の判断を取り消された法人は、自動的に寄附金優遇法人としての資格を失う、と考えられるからです。

b 相続財産の寄附に係る非課税措置


 相続税においても、「第三者機関」による公益性の判断をもって非課税とできるよう、制度を見直すべき。


 上記a「寄附金優遇法人の範囲」と同様の考え方に基づくものと思われます。公益性を有する非営利法人への資産寄附を奨励する意味でも、この方向に沿って見直しを行うことを希望します。

c 現物による寄附


 現物による寄附を円滑にするための見直しを検討すべき。


 現行みなし譲渡所得税非課税制度には不合理な点が多々あります。贈与のあった日から2年以内に直接公益事業の用に供する、また、受贈側が処分した場合は寄附者側に遡り課税する、などの点です。bと併せて、公益性を有する非営利法人への資産寄附を奨励する見地から、ぜひ抜本的な見直しを行っていただきたいと考えます。なお、報告書は、本非課税制度の対象法人の範囲には言及していませんが、「制度の一貫性」から見て、対象法人は上記の諸寄附税制の場合と同様、「第三者機関」の判断に連動するのが適当と考えます。

d 認定NPO法人制度


 認定基準のあり方について、NPO法人の実態に即したものとなるよう更に検討を進める必要がある。


 現在NPO法人は約2万2,000存在しますが、そのうち認定NPO法人は僅か34に過ぎません(平成17年6月1日現在)。これでは、本来NPO法人への寄附金を助長するはずの認定NPO法人制度がほとんど機能していないといわざるを得ません。「民間が担う公共」の視点に立ち、抜本的な見直しを行うことが必要と考えます。

e 寄附金控除


(個人寄附)

・寄附金控除の限度額(30%)については、更に拡充する余地があるかについて検討を行うべき。

・現行1万円の適用下限額について、そのあり方を改めて検討する必要がある。

(法人寄附)

・公益目的の寄附金に係る損金算入枠については、これを拡充する方向で見直すべき。

・一般寄附金の損金算入枠については、これを縮小する方向で検討を進める必要がある。

 上記の諸点について大筋異論はありません。唯一指摘したいのは、個人寄附に係る「現行1万円の適用下限額」です。

 少額寄附金促進の見地から、適用下限額を廃止するのが妥当と考えます。実務上の必要上から仮に何らかの金額上の制限を設けるとする場合は、「適用下限額(足切額)方式」ではなく、「ハードル方式」(当該金額を超えれば、その全額を非課税とする方式)」を採用するのが適当と考えます。

 なお、ハードル方式とする場合でも、現行の1万円という制限額がよいかどうかは疑問です。制限額は切り下げる方向で検討するのが妥当と考えます。

f 年末調整制度の導入

 報告書では触れられていませんが、個人の寄附へのインセンティブを高めるためには、年末調整で寄附金控除ができる制度を導入することが必要であると考えます。現在、寄附金控除は確定申告によることとされていますが、生命保険料控除のように年末調整で控除が可能になれば、寄附者にとっての利便性が高まり、寄附文化の醸成に有効と期待されます。

g ボランティア優遇税制の導入

 個人の寄附には、役務の寄附(ボランティア活動)という形もありえます。ボランティア活動を活性化するためには、金銭による寄附を優遇するのと同様何らかの優遇を与えるのが適当と考えられます。

 個人が公益性を有する非営利法人に対して無報酬のボランティア活動を行った場合は、それに直接要した諸経費(交通費、活動の際の被服等に要した経費等)を寄附金とみなす制度の導入を提案します。

 (2) 地方税(個人住民税)における寄附金税制


・地域に密着した非営利法人等については、地方税においても寄附金控除が可能となるよう見直すべき。また、現行10万円の下限額についても、大幅に引き下げることが望ましい。

・個人住民税の性格にあった寄附金控除の仕組みは、基本的に条例などにより地方公共団体によって独自に構築されるべき。

 現行地方税制において、法人住民税(所得割額。以下同じ)の場合は、国税である法人税の取扱いと完全にリンクしているのに対し、個人住民税(所得割額。以下同じ)の場合は、寄附金控除が適用される範囲及び適用下限額の面において国税である所得税の取扱いとは全く異なる取扱いがなされています。このため、個人が寄附した際、国税では所得控除されても、個人住民税では所得控除されないという事態が生じています。所得税と個人住民税において所得の捉え方が異なることは整合性に欠けるといわざるを得ず、この際、法人住民税の取扱いの場合と同様、個人住民税の取扱いに関しても、国税である所得税の取扱いにリンクさせるのが適当と考えます。なぜなら、個人住民税が「地域社会の会費」としての性格を持ち、地域社会にとって欠かせぬ財源の一つであることを認めるとしても、個人が行う寄附の効果は、間接的には地域社会にも及ぶと考えられるからです。


5 今後の検討について


・「第三者機関」の判断に基づき「公益性を有する非営利法人」とされれば基本的に、税制上、法人税法上の公益法人等となると同時に寄附金優遇の対象法人とも位置付けられることになる。

・それだけに、「第三者機関」の責務は重い。今回の制度改革の成否は、「第三者機関」の公益性判断や事後チェックが、国・地方を通じ、制度・運用両面において継続的に適正かつ的確になされるかどうかにかかっている。

・政府に対して適切な制度設計を強く要請するものである。と同時に、今後、各方面においても、この「基本的考え方」について活発な論議がなされることを期待したい。

 これについては全く同感です。私どもも、法制・税制を含む今回の法人制度改革の成否は、一にかかって「第三者機関」にあると考えています。

 しかるに、「第三者機関」の構成、また、公益性の判断基準、事後チェックのあり方等に関する検討状況は明らかにされておらず、報告書が期待する「活発な論議」も現段階ではなしようがないというのが実情です。

 「第三者機関」の検討状況に関する事前公表及び公開の議論がまず必要と考えます。

 同時に、今後の税制に関する詳細設計に関しても、実態をよく知る民間人を交えた公開の議論が不可欠であることは付け加えるまでもありません。