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2005年06月20日


政府税調「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」に関する太田理事長所感


6/17政府税調、非営利法人課税等に関する「基本的考え方」を発表
「民間が担う公共」を支える税制の構築へ
太田理事長が所感
(平成17年6月20日)


 政府税制調査会の基礎問題小委員会及び非営利法人課税ワーキング・グループ、(WG)は6月17日『新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方』(PDFファイル)を発表しました。

 基礎問題小委及び非営利法人課税WGの4月15日以来の議論の大要をとりまとめたものですが、その内容は体系的かつ包括的です。改革の基本的方向性に関し、「“新たな非営利法人制度”とこれに関連する税制を整合的に再設計し、寄附金税制の抜本的改革を含め、“民間が担う公共”を支える税制の構築を目指そうとするものに他ならない」と述べ、寄附金税制の抜本的な改革を提案しております。

 「基本的考え方」はA4判15ページ。「はじめに」「一非営利法人に対する課税のあり方」「二公益法人等に共通する課税上の諸論点」「三寄附金税制のあり方」「結びにかえて―制度設計に当たっての要請」の5部からなっております。
 構成は次のとおりです。

はじめに

 一 非営利法人に対する課税のあり方
  1 基本的考え方
  2 「公益性を有する非営利法人」に対する課税
  3 「公益性を有する非営利法人」に以外の非営利法人に対する課税
  4 公益性判断の変更があった場合等の取扱い
  5 特別法に基づく非営利法人等との関係
  6 地方法人課税

 二 公益法人等に共通する課税上の諸論点
  1 公益法人等の課税対象所得の範囲(収益事業課税方式)
  2 軽減税率及びみなし寄附金制度
  3 利子・配当等の金融資産収益に対する課税

 三 寄附金税制のあり方
  1 寄附金税制の見直しの基本的方向
  2 国税における寄附金税制
  3 地方税(個人住民税)における寄附金税制
  結びにかえて

同「考え方」に関する公法協・太田達男理事長の所感を、以下に掲載します。



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「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」に関する所感



財団法人公益法人協会

理事長 太田達男


 政府税制調査会の基礎問題小委員会及び非営利法人課税ワーキング・グループより6月17日、「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」(報告書)が発表されました。

 報告書は、4月15日以来の基礎問題小委員会及び非営利法人課税ワーキング・グループ合同会議での議論の大要をとりまとめたもの、とありますが、その内容は体系的かつ包括的なものであり、短期間に数多くの論点につきその考え方をとりまとめられましたご努力にまず深い敬意を表するものであります。

 以下、主な点について所感を申し述べます。

1 改革の基本的方向性について

 報告書は、改革の基本的方向性に関し、「“新たな非営利法人制度”とこれに関連する税制を整合的に再設計し、寄附金税制の抜本的改革を含め、“民間が担う公共”を支える税制の構築を目指そうとするものに他ならない」と述べています。この基本的方向性に関しては、かねがね当協会が提言していました趣旨と同様であり全面的に賛意を表します。今日、公益法人やNPO、NGO等が担う公共の領域が増大していることは世界的な潮流であり、今後の検討に当たりましても、ぜひこの考え方を堅持してくださることを切望いたします。

2 非営利法人に対する課税のあり方について

 報告書は、新たな非営利法人を次のa、b、cの3種類に分け、それぞれ次のような課税のあり方を構想しています。

 a (第三者機関により認定された)公益性を有する非営利法人…営利法人と競合関係にある事業のみ課税(収益事業課税)

 b 専ら会員のための共益的事業活動を行う非営利法人…会員からの会費については非課税とする方向で検討することが適当

 c 上のa、bいずれにも当てはまらない非営利法人…営利法人と同等の課税

 新たな非営利法人を上記の3種類に分け、それぞれ課税のあり方を変えることについては基本的に問題はないと考えます。ただし、後述するように、a(公益性を有する非営利法人)の場合には、収益事業の範囲に関する慎重な検討が必要と考えます。また、b(専ら会員のための共益的事業活動を行う非営利法人)の場合には、会費と同様の性質を持つ寄附金、補助金、助成金等も非課税とすべきと考えます。

3 公益法人等に共通する課税上の諸論点について

 報告書では、公益法人等に共通する課税上の諸論点として、収益事業の範囲、軽減税率、みなし寄附金制度、金融資産収益に対する課税のあり方の4点を挙げ、それぞれ見直す、としています。

 (1) 収益事業の範囲

 収益事業の範囲を検討するに当たっては、公益法人等の本来事業(当該法人の設立目的たる事業)との関係を明確にすることがまず必要ではないかと思われます。現行税制では、本来事業でも税法上の収益事業に該当する場合は課税とされています。しかし、公益活動の中には外形的に営利法人も行う事業が数多くあります(福祉、文化芸術、環境保全、学術振興等は一例です)。民間公益組織による公益活動を支援する政策を採る以上、公益活動に本来関連する収益事業は、欧米同様非課税とすべきであると考えます。単に営利法人と競合するといった観点からのみ考えるべきではないと考えます。

 (2) 軽減税率、みなし寄附金制度

 軽減税率及びみなし寄附金制度は、セットで考えられるべき問題と思われます。両者は相関関係にあり、例えば、公益法人等の税率を普通法人並みとするとしても、みなし寄附金制度を拡充すれば、制度の趣旨は生かされると考えられるからです。

 (3) 金融資産収益に対する課税

 公益法人等の金融資産収益を金銭貸付業から生じた所得と同等と見るのは論外です。公益事業に属する金融資産収益は公益活動の原資であり、従来同様非課税とすべきです。

4 寄附金税制のあり方について

 報告書では、「寄附金税制についての従来の考え方を抜本的に見直し、より一層その充実を図る方向を目指すべき」とし、「“第三者機関”が判断した“公益性を有する非営利法人”をもって寄附金優遇法人の対象法人とする…ことが合理的」「相続税においても、“第三者機関”による公益性の判断をもって非課税とできるよう、制度を見直すべき」「現物による寄附を円滑にするための見直しを検討すべき」、また「認定NPO法人の認定基準のあり方について、NPO法人の実態に即したものとなるよう更に検討を進める必要がある」等々と述べています。

 寄附金税制に関するこのような考え方の大きな転換は、まさに時代の要請に合致したものであり、全面的に支持します。ぜひこの基本方針に沿って制度整備を進めていただきたいと考えます。

 なお、地方税における寄附税制についても、所得税同様抜本的な改正を望みます。

5 今後の検討について

 報告書は、締め括りに「今後、各方面においても、この“基本的考え方”について活発な論議がなされることを期待したい」と述べています。大歓迎です。当協会でも、「民間が担う公共」に対する税制のあり方についてともに真剣に議論したいと考えますが、併せて第三者機関に関する公開の論議が必要であると考えます。

 「基本的考え方」は、公益性判断や事後チェックを担当する第三者機関の責務の重大性に鑑み、適切な制度設計を強く政府に要請しています。当協会も、法制・税制を含む今回の公益法人制度の抜本的改革の成否を握るものは第三者機関であると考えています。

 今後、政府における公益性判断基準、事後チェックの内容、第三者機関の構成等の詳細については、その検討状況を事前に公開し、広く国民の意見を問うべきです。