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2004年10月28日


『民間の力を生かす22の対案』刊行、PDFにて公開


 民間法制・税制調査会(民間法・税調)では、堀田力座長(さわやか福祉財団理事長・弁護士)、山田二郎座長代理(租税訴訟学会会長・弁護士)及び太田達男委員((財)公益法人協会理事長)の3名の責任編集による報告書 『公益法人改革 これでよいのか政府の構想―民間の力を生かす22の対案― 』 を刊行いたしました(記者発表を10月27日に実施)。

 本書は、民間法・税調が本年1月から9月まで計13回にわたって進めた、公益法人制度改革の諸論点に関する理論的検討の成果。公益法人改革に関する政府の構想の当否を検討し、よりよい改革案にするため、民間法制・税制調査会で委員から提示された案の中から、政府案と異なる選択肢 として検討するに値するものを22項目取り上げ、編集したものです。
 よりよい改革実現のため、活用していただきたいと存じます。

 本書はA5判・140頁(非売品*)、目次、構成等は次のとおりです。全文は PDFファイル をダウンロードしてご覧ください(1,050KB)。

 《目 次》

 ■民間から声を上げよう
 ■民間法制・税制調査会 委員及びオブザーバーの顔ぶれ

 第1部 公益法人制度改革の目的
  1 公益法人制度改革の目的は何か
  2 新しい公益法人制度の骨格をどう考えるか
  3 官益法人と不良法人はどのようにして排除するのか

 第2部 要 約
  その1 法人制度
  その2 税制関係

 第3部 論点及び対案
  その1 法人制度
   第1章 法人制度の枠組み
   第2章 新公益法人の登記
   第3章 非営利法人制度
   第4章 公益性の判断基準及び適正運営
   第5章 公益性の判断基準
  その2 税制関係
   第1章 非営利法人に対する税制
   第2章 新公益法人に対する税制
   第3章 寄附税制

 第4部 解 説
  その1 法人制度
  その2 税制関係

 巻末資料



〔本書の構成〕

〔序 言〕

 序言では、民間法・税調での検討経過を振り返るとともに、本書編集の意図を述べている。現在までに明らかになっている政府の公益法人改革構想には問題点が多い。本書は、政府案に対し選択肢を提供し、みんなでどうすればよいかを考えるための資料としてまとめた。もし本書に書いた提案のほうがよいと思えば、それが改革の中で生きるよう、いろんな人々に働きかけていただければ、というのが編者の願いである。

〔第1部〕

 第1部では、公益法人制度改革の視点及び改革方向について述べている。公益法人制度改革は、民間活力を最大限に引き出すために必要な構造改革の一環として捉えられるべき、というのが編者の一致した見方である。今後の社会を考えるとき、民間公益活動を奨励し、支援する仕組みをつくることこそ今求められているのではないか。税制上の支援措置の拡大、寄付文化の醸成など思い切った発想の転換が必要である。

 公益法人制度改革をめぐっては、官益法人や不良法人の存在がしばしば問題にされるが、官益法人の存在は行政の問題である。行政が決断すればすぐにでも改められるもので、公益法人制度改革とは本来別物のはずである。また、不良法人排除に照準を当てれば、必然的に規制強化に向かわざるを得ず、民間の公益活動を圧殺する結果になりかねない。不良法人は結果として淘汰されるような仕組みにすることが必要である。

〔第2部~第4部〕

 第2部~第4部が本書の中心部分である。22の対案を掲げている。





〔22の対案とは〕

・法人制度

(1) 法人制度の枠組み

 公益性のある非営利法人とそうでない非営利法人を一元化することにどのような意味があるのか。公益性のある非営利法人とそうでない非営利法人とでは、使命・目的・事業・組織のあり方が異なる。一元化は理屈に合わない。

(2) 新公益法人に実績が必要か

 まして、新公益法人となるのに非営利法人としての実績を積ませることになれば、大きな問題。民間公益活動支援という改革目的に逆行することになろう。社会福祉法人や学校法人の設立などとの整合性にも欠ける。

(3) 新公益法人の登記

 仮に非営利法人一元化となった場合でも、新公益法人を登記に反映させることはぜひ必要である。そうでないと、一般の人々には、当該法人が単なる非営利法人であるか、新公益法人であるかの識別がつかないことになる。

(4) 非営利法人制度

 仮に非営利法人制度を新公益法人のベースにする、というのであれば、残余財産非分配型の法人類型も併せてつくるべきである。新公益法人としての認定を取り消された後、非営利法人に移り、残余財産分配ということになっては、それまでの寄附者らの信頼を裏切ることになる。

(5) 非営利財団法人制度

 非営利財団法人制度の創設は疑問である。財産隠しに使われる可能性があるし、ニーズもないのではないか。

(6) 公益性の判断基準

 公益性の判断基準は、その団体の目的、事業、組織の3要件から規定されるべきである。

(7) 事業の要件

 その際、事業については、誰の目にも明らかなように、できるだけ具体的に列挙することが望ましい。その上で、類似事業についても認める趣旨のアナロジー条項を設ければ、時代の変化にも十分対応できると考える。

(8) 新公益法人のガバナンス・規律

 新公益法人には、当然しっかりしたガバナンス・規律が求められる。実効性のある明確な基準が必要になる。その基準づくりには、実情をよく知る民間サイドの議論も尊重すべきであろう。弁護士や公認会計士、公益法人実務家からなる民間のスタディ・チームに検討を委ねるのも一案。

(9) 情報開示と事後チェック

 新公益法人には、徹底した情報開示を求めるべきである。それにより市民がモニタリングできることが必要である。

(10) 公益性の判断機関

 中立性、独立性の見地から見て、国家行政組織法第3条に基づく行政委員会(3条委員会)が最も適当である。特定行政庁が判断機関となった場合は、主務官庁が形を変えて残る結果になりかねない。課税庁は論外。

(11) 判断機関が果たすべき機能

 公益性の判断機関は、支援機能と事後チェック機能を併せ持つことが望ましい。公益性の判断の後には、当然そのフォローアップが求められる。

2 税制関係

(12) 非営利法人税制

 ○ 非営利法人の場合、利益を分配しない以上、その利益を享受する者が存在しないのであるから、課税する対象が存在しない。課税は、非営利法人が営利法人と同様の収益事業を営む場合に限るべきである。

 ○ 非営利法人は準則主義で設立されるから原則課税とすべき、という議論がある。
   しかし、準則主義だから原則課税という理屈は成り立たない。現に準則主義で非課税の非営利法人もある。

 ○ 中間法人は原則課税であり、これを前提とすべき、という議論がある。しかし、中間法人課税は、法制審議会、税制調査会、国会への事前説明もなく、闇討ち的に決められたものであって、これを前例とすることは間違いである。

 ○ 非営利法人は残余財産を分配できるから原則課税とすべき、という議論がある。しかし、残余財産を分配するときはその際課税すれば足りるから、残余財産分配を根拠に原則課税とするのはおかしい。

(13) 非営利法人への寄附金や会費の扱い

 非営利法人への寄附金・会費(対価性ないもの)には課税すべきでない。寄附金や会費は、すべて事業のために投入される資金であって、担税力を発生させないからである。

(14) 新公益法人税制

 法人制度上の公益は、税制上支援措置を採るべき公益と一致しているから、法人制度上認められた公益法人には、そのまま税制上の支援措置を採るべきである。

(15) 新公益法人の本来事業

 新公益法人の本来事業(関連事業を含む)から生じる収益は非課税とすべきである。なぜなら、公益法人の提供するサービスは国や地方自治体の提供するサービスと異ならない。国や地方自治体の公共サービスと同様に扱うべきである。

(16) 法人税課税の対象となる収益事業

 特定業種を限定して掲げる限定列挙主義と対価を得る事業一般を課税対象とする包括規定の2案がありえる。しかし、いずれの案を採るにせよ、課税すべき収益事業は、営利事業と同等の人的組織及び物的設備を備えて行う、対価を得る事業に限定すること、及び実費負担金や謝礼金は対価としないことが課税の適正上必要である。

(17) みなし寄附

 収益事業から公益事業へ投入される資金は、納税と同じ機能を果たすのであるから、みなし寄附の100%損金算入を認めるべきである。

(18) 利子・配当所得の扱い

 寄附者は利子・配当所得を事業運営に充てさせるために寄附したのであるから、利子・配当所得の使途は限定されており、担税力がない。よってこれに課税するのは不当である。

(19) 内部留保の扱い

 過大な内部留保については事後チェックに基づく是正措置により対応すべきである。一律の課税措置は採るべきでない。

(20) 寄附税制

 ○ 「公益」に差をつけることは困難であるから、新公益法人には、英米同様設立と同時に寄附税制上の支援措置を付与するのが本来の考え方である。

 ○ 寄附税制を仮に公益法人の設立と切り離すとした場合、寄附税制支援措置の対象法人は、事業遂行に必要な資金のどれだけを寄附金や会費、補助金、助成金、基金の運用収入によって賄っているかを計る広義のパブリック・サポート・テストによるべきである。

(21) 個人寄附と法人寄附

 現行制度では、個人寄附による寄附金控除の対象範囲は法人に比べ厳格である。
 個人寄附と法人寄附の平等を図るべきである。

(22) 資産寄附税制

 みなし譲渡所得税及び相続税に関する現行の支援措置は厳格にすぎ、かつ、要件が不統一である。資産寄附税制は、新公益法人に対する(金銭)寄附支援税制と同一の要件にするのが望ましい。


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*本報告書の発行に当たっては、笹川平和財団、さわやか福祉財団、会員有志団体から助成を受けました。