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2019年1月


秩序の回復

鶴見 和雄((公財)公益法人協会 常務理事・事務局長)

昨年末から2019年初春に相応しい言葉を探しているが、どうもしっくりした前向きな思いが浮かばない。その理由の一つに、ここ数年の間、厳しさが増す国家間の秩序の崩壊、行き過ぎた新自由主義とグローバリゼーション、そして企業におけるガバナンスの軽視傾向からくる、グローバルレベルでの社会基盤の地盤沈下に起因しているのではないかとの懸念が払拭出来ないでいる。そしてこの懸念材料が集約された結果が、狭まりつつある「市民社会スペース」に繋がっているのではなかろうか。

かつて深刻化する地球規模の諸問題に対し、市民社会の参画が大いに期待されていた。
市民社会が国際的にも政策形成過程に積極的に関与し、正にグローバル・ガバナンスの下、各国の公益法人も含め、多くの非営利セクターがその役割を果たしていたが、今はどうであろうか。2015年に国連により採択されたSDGs(持続的開発目標)と云う形で、世界が一つの方向に大きくギアをチェンジした事は大いに歓迎されるものだが、逆な見方をすれば、グローバルレベルでの無秩序からの脱却の強い意志がみえ隠れしている。

グローバリゼーションからの恩恵の傍ら、社会的不公平や国内・各国間の格差の拡大を産み出し、本来当事者であるべき国家自身が自国第一主義の下、地球の温暖化に逆行する政策を打ち出し、これにポピュラリズムが横行していている。極めて遺憾なことだ。また世界の多くの先進国が過去に類を見ない難民問題に直面しているばかりでなく、当該国内において人種対立の火種となっている。何れ我が国もこの問題を真摯に受け止めねばならぬ時期が到来するであろう。

国内に目を向けてみよう。度重なる自然災害は国内の失業や貧困問題に拍車をかけ、地域間の格差に改善の余地は期待薄だ。昨年末に発覚した企業統治に端を発する不正疑惑の如く、企業経営においても、秩序の崩壊による経営問題が露呈しているが、これは公益法人セクターにおいても決して対岸の火事とは言えない。非営利セクターに当てはめた場合、果たして健全なガバナンスが働いているか、常にCheck & Balanceが求められる。現行の公益法人制度がスタートし、10年が経過した今こそ、私益、公益に関わらず、それぞれのミッションに立ち戻り、「ガバナンスの棚卸」をすべきではなかろうか。

公益法人セクターが果たすべき役割は、それぞれの国家、地方自治体や地域が抱える社会問題は何かを直視し、市民社会と共に政治への関心を取り戻し、社会的な歪みを共に是正することに他ならない。年号が変わる今年こそ、様々な「秩序の回復」に果敢に立ち向かう初年度としたいと強く心に念じた。