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2018年12月


非営利組織の自律性 ―公益法人ガバナンスコードの提唱―

太田 達男((公財)公益法人協会 会長)

米国・ジョンズ・ホプキンス大学のレスター・サラモン教授をリーダーとする「非営利セクタ―国際比較研究」プロジェクトにおいて、非営利組織の定義として掲げる5要件はあまりにも有名で、今更ここに述べる必要はないが、ここで検討してみたいのは、その第4要件「self-governing」である。
いろいろな訳し方があると思うが、直訳すれば「自己統治」ということになるが、私はここでは「自律性」として考える。
すなわち、公正で、社会に開かれ、規律正しい組織運営をする能力を備えていることを、自律的に確保していることが非営利組織たる要件の一つである。

英米の非営利組織の全国団体(いわゆる中間支援団体)は、この点において格段の注意を払い、努力を傾注しているように見受けられる。

英国では、特に2012年以降続発したチャリティの不祥事件が国会で問題となり、政府による規制強化が叫ばれる中で、危機感を覚えたNCVO(National Council for Voluntary Organisations)他6団体は、民間による自浄作用が必要との立場から、すでに制定されていた、2005年の“Code for the Voluntary and Community Sector”(2010年一部改訂)を、全面改訂した"Charity Governance Code"(Code)を策定し、公表した。
規制当局であるチャリティコミッション(C.C)もこれを歓迎し、C.CのガイダンスC.C10“The Hallmarks of an Effective Charity”を廃止し、チャリティは以後Codeに準拠して経営するよう指導している*1。

米国でも、2004年に財団の不透明な運営が議会で取り上げられ、規制強化の動きが出てきたが、危機感を抱いた中間支援団体Independent Sectorは、法令による押し付けではなく自律的に対応すべき問題として、議会への各種提言とともに自主規制綱領(Principles for Good Governance and Ethical Practice)を作成し、非営利公益団体がこれをモデルとして、自律的にガバナンスと透明性を高めるよう働きかけた*2。

つまり、英米とも中間支援団体は、政府の規制によるものではなく自らが身を律することで、しっかりした自己管理能力を高めようという姿勢で臨んできたということだ。
 
翻って日本ではどうか。
昨今スポーツ団体を中心として耳目を騒がす不祥事件が続発しているが、スポーツ団体に限らず、運営に疑問ありとして法令上の報告要請を受けた件数は、平成22年度以降29年度までで累計643件に上る(公益認定等委員会 各年度「公益法人の概況及び公益認定等委員会の活動」による)。
これらの内容は公表されていないので不明であり、中にはむしろ行政庁側の勇み足的なものもあり得ようが、かなりの公益法人が運営上問題視されたことは事実であろう。
 
このような状況の中で、新聞報道によれば自民党行政改革推進本部は、来年夏に決める経済財政運営の基本方針に反映させることを目指し、テーマごとに5つのチームを発足させるという。
その中に「公益法人のガバナンス改革」チームがあると報じられている。
また、これと連動しているものではないと思うが、公益認定等委員会でも新制度施行10年を振り返り、「民による公益の増進」の状況や委員会、行政庁の取組・成果等について概観し、問題点が把握された場合は、当該課題について検討するとしている。
 
これらの与党・政府の動きがある中で、公益法人協会は、政府による規制強化ではなく、公益法人の自浄作用として、不祥事が起こらない自律的なガバナンス体制の構築を各公益法人に促す努力をするべきであり、内外に広くアッピールすべきと考える。
その一つとして、日本版チャリティガバナンスコードを策定し、少なくとも会員にはその採用を促すことを考えてみたらどうだろうか。

もちろん、その検討にあたっては委員会を設け、広く意見募集も行うなど民主的に進めていくことも必要であろう。


*1 公益法人協会HP内調査報告書「英国チャリティのガバナンスコードについて」

*2  『米国調査ミッション報告書』(2009年9月 公益法人協会)