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2018年3月


公益目的事業ということ

鈴木勝治((公財)公益法人協会 副理事長)

本年(平成30年)12月1日は、新公益法人制度が施行されてから10年にあたる。
このためこの施行10周年を記念して当協会でもシンポジウム等を開催する予定である。
シンポジウム等については、詳細が決まり次第広報されると思われるので、ここでは、10年以上昔のいわゆる公益法人改革三法、なかんずく公益認定法制定時の思い出を書いてみたい。

三法とも国会での成立は平成18年6月2日であるが、その前段階における立法担当者による原案の作成には遅速があった。
一番遅れたのが公益認定法のそれであり、この法律が新しい公益法人制度の根幹をなすだけに、今か今かと待ち構えていた記憶がある。
ようやく得たその成案をみて、個人的に驚いた点は数多くあるが、なかでも第2条の4号の「公益目的事業」という言葉には若干の違和感を覚えた。
自らの不明や浅学を恥じるばかりであるが、その当時は、公益法人は一般用語として使われている「公益事業」を行うものとばかり個人的には思っていたことから、「公益」と「事業」の間に「目的」という言葉が入る理由が分からなかったからである。

しかし、この法律案をよく読んでみると、第1条に「(前略)“民間の団体が自発的に行う”公益を目的とする事業の実施が公益の増進のために重要となっていることにかんがみ、当該事業を適正に実施し得る公益法人を認定する制度を設けるとともに、(後略)」とあり、「公益目的事業」という言葉は、「公益」と「目的」と「事業」を合成したものであるということが分った。
そしてより重要な点は、“ ”で括った部分の「民間の団体が自発的に行う」という前提が入っていることであり、このことにより世間一般で使われている「公益事業」という言葉とは根本的に違うということが納得できた次第である。

念のため「公益事業」を法律学辞典で引いてみると、「労働関係調整法上は、運輸、郵便、信書便、電気通信、水道、電気、ガス、医療、公衆衛生上の事業であって、公衆の日常生活に欠くことのできないもの及び内閣総理大臣が指定した事業をいう。」(『有斐閣法律用語辞典第4版』)とされており、この定義は「公益目的事業」とは明らかに異なっている。
立法者がここまで注意して法律用語を創出していることに感心したところである。
最近当局の検査等において、公益法人の行っている事業は「公益事業」であるので、官乃至はそれに準ずる団体が主導するその事業の規律乃至は規則等が適用乃至は準用されるべきといった指摘がままあると聞いている。
確かに公益法人の行っている「公益目的事業」の中には、法律用語としての「公益事業」と同一の性質をもつものがあり、その限りにおいて同様の規律等が適用されるべきという考えは分らなくはない。

ただ、上述の通り「公益目的事業」は、民間の団体が自発的に行っているものであり、その資金の性格や出捐者(あるいは事業の提唱者)の志が第一義的に反映されるべきことはいうまでもない。
従って上記の規律等は参考としつつも、民間が自発的かつ自由にその事業を遂行することができるのは当然のことと考えるが如何であろうか。