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2016年6月


豊かな関西文化を育んだ志の物語

山岡 義典((公財)助成財団センター理事長、(特活)市民社会創造ファンド運営委員長)

この3月末、ミネルヴァ書房から一冊の本がでた。
「「志」の源流と系譜」を副題にもつ『文化を支えた企業家たち』だ。

かつて設立間もないサントリー文化財団で事務局長として活躍され、後には専務理事も務められた伊木稔さんの著作である。
まず各章のタイトルだけを掲げると下記の通り。
 序 章 文化を支えた人々―商人・企業家・経営者
 第一章 民間公益活動の先駆者たち
 第二章 近世商人が支えた学問・文化
 第三章 近代企業家の文化・社会活動
 第四章 現代企業の文化・社会貢献
 終 章 志が支えるもの―「民からの公共」から「民による文化」へ

序章で著作の視点を明らかにした上で、第1章では、古代から中世、近世と続く民間人の社会文化活動を、先駆的な担い手を軸に地域的な展開として描き出す。
第2章では、近世の商人たちが地域の学問・教育の発展にいかに大きな役割を果たしてきたかを全国的に見渡した上で、大坂の含翆堂と懐徳堂について詳しく成立過程を分析する。
第3章では、大阪を中心とする明治の経済界のリーダーたちの強い公共・公益活動への思いを描き、医療・福祉分野と学問・教育分野での活動事例を紹介、近代の企業家たちの志を育んだものが何であったかに思いをはせる。
第4章では、戦後の企業フィランソロピーの流れを概観し、鳥井信治郎から佐治敬三へと継承されたサントリーの文化・社会活動について詳述するとともに、企業博物館の現状について実態を分析する。
終章では、将来に向けた著者の思いを語る。

伊木さんとは、事務局長をしておられた頃から私も研究会などでご一緒した思い出がある。
ちょうど私が、助成財団センターの立ち上げに奔走していた頃でもあり、側面的にご協力もいただいた。
大阪を拠点に幅広く文化的実践活動に携われながら、企業の文化活動について思索・考察し、歴史的な視点や人の思いを重視しながら事例分析を重ねて執筆してこられた。
現在は大阪商業大学教授として商業史博物館の館長もされておられるから、まさに人と立場を得た著作で、これまでのご活躍の総仕上げともいえるだろう。

民間公益活動の存在する意味を深く考える上での貴重なヒントが、本書には随所に見え隠れする。
文章も平易で味わい深い。実践に携わる多く方に読んでいただきたい本だ。

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