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2016年1月


 "It's care."

太田達男((公財)公益法人協会 理事長)

あるとき、それは「黄昏時のホテルオークラのわりに小さなスィートで、残光が当たっている中」での二人の会話である。一人は、日本国際交流センター(JCIE)理事長の故山本正さん、もう一人は誰あろう故ジョーン・D・ロックフェラー3世だ。

山本さんは「フィランソロピーの根源は何ですか」と聞いた。ロックフェラーがポツリとひと言「It's care」と言った。さらに、「それはいろいろな人に対する思いやりです。じぶんだけではないということなのです」と付け加えた。

これは、筆者が非営利セクターに関係する先達と対談する企画「フィランソロピー対談 第一回」での、山本氏の発言から引用している(『公益法人』誌2000年8月号)。

“あるとき”とは何時だろうか。
ロックフェラー3世は1978年7月に逝去しているから、その前であることは間違いないが、前記対談で山本氏はJCIEが主催し、公法協も協力させていただいた74年の「米加フィランソロピーミッション」と、それに続く75年の国際シンポジウム「先進社会における財団及び民間資金援助活動の役割」を回想し、その頃「ちょうど東京においでになっているときに、私を呼んでくださいました」と語っていることから、その資料を紐解くと1974年10月23日と推定される。

フィランソロピーという用語が辞典的用語ではなく、非営利活動の本質に係る用語として日本で認識されるようになったのはいつの頃から、どのようなきっかけからであろうか。
米国在住のあるNPO研究者から、そのような質問が日本NPO学会のメーリングリストに発せられ、多くの人がそれぞれヒントを提供されたが、私は、もちろん私の知る限りではあるが、それは間違いなく故山本さんの構想がきっかけであったと信じている。

再び「対談」を引用しよう。
「私はJCIEを設立した当時(1970年、筆者注)から、フィランソロピーというものは、行政対非営利の関係での相当中心的なテーマだと思い始めていましたが、直接のきっかけは73年後半のことです」と語っている。73年後半のことというのは、JCIEが「インターナショナル・フィランソロピー・プロジェクト」を始めたときである。
それが、その後前述の米加フィロンソロピーミッション、「先進諸国における財団及び民間資金援助」
シンポジウム、さらにはジョーン・D・ロックフェラー3世が提唱し、米国フィランソロピーの現状やその重要性と税制(1969年のレーガン税制)の問題点などを研究調査したファイラーコミッション報告書に関するシンポジウム(76年)と、立て続けにフィランソロピームードが盛り上がった時期であった。

それにしても、フィランソロピーの根源は「It's care」と喝破したのが、米国のフィランソロピストといえば誰もが思い出す、当のロックフェラーだけに何と含蓄もあり、美しい響きの言葉だろう!
少子高齢化、格差拡大など社会的課題がますます大きくなる日本社会において、この言葉はますます輝きを増すであろう。

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