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2015年2月


SR時代の助成財団について-期待されるFoundation Social Responsibilityへの取組み―

田中 皓((公財)助成財団センター 専務理事)

2月13日に助成財団センター主催で平成26年度の「助成財団の集い」が開催されました。テーマは「SR時代の助成財団―助成財団の社会的責任(Foundation Social Responsibility〔FSR〕)を考える―」。

新公益法人制度がスタートして6年間が経過する中で、新公益法人の組織的、また金銭的な不祥事の発覚は新制度への社会的信頼を損なうことになり、かつ近年の我が国における国費を使用した学術研究分野における不祥事の多発も社会的信頼を揺るがす事態に至り、少なからず民間研究助成にも影響を与えてきています。
加えて、国際的には欧米、アジア等の民間助成の動向は助成団体数や助成金額において着実に伸びを示しているのに反して、我が国のみが一人負けの状況が報告されています。その背景には我が国の20年以上にわたる低金利政策による財団体力の疲弊や10年以上に及んだ公益法人制度改革への対応等の影響が考えられていますが、そのような厳しい状況にあっても、助成財団は税制優遇を受ける公益法人として今後も社会的責任をきっちり果たしていく必要があります。今回の「助成財団の集い」は、そのために必要な価値の高い財団運営や事業の展開について具体的事例からのヒントを模索する狙いをもって開催されました。

まず、第1部・基調講演(1)では、関正雄氏(損保ジャパン日本興亜CSR部上席顧問、同環境財団専務理事、明大特任准教授)から「SRの現状と動向―助成財団として考えること―」と題した講演で、 Foundation Social Responsibility〔FSR〕の視点から、SRの7つの原則と7つの中核テーマの実践とあらゆる関係者と連動する「マルチステークホルター・エンゲージメント」が重要になるとの提言がありました。
基調講演(2)では、日本学術振興会の黒木登志夫氏(我が国がん研究の第一人者、日本癌学会会長、岐阜大学学長を歴任、花王芸術・科学財団理事)から「研究助成の現状と考え方」と題した講演で、我が国の科学技術に対する国家助成の現状や日本の大学の現状と国際比較を踏まえ、民間助成財団の50%を占める研究助成財団は、1. 審査の問題点への対応(不正問題等を勘案し、審査システム及び審査委員の質を高めること、審査における利益相反の排除等の透明性、公平性、公開性の重要性)、2. 公的助成の及びにくい分野への民間助成の進出(芸術分野、体育分野)に言及されました。

第2部では、第1部の講演を受けて、助成事業の実務において社会的責任を果たす観点から、より価値の高い財団運営や事業、付加価値を高めていくための取組みにチャレンジしている財団を代表して渥美国際交流財団、花王芸術・科学財団、内藤記念科学振興財団、三菱商事復興支援財団の4財団からそれぞれの独自の取組みが報告されました。
いずれの取組みも現状の助成事業や奨学事業に付加価値を与え、また非公募事業を含め価値の高い事業を開発・実施していく内容で、助成財団として社会的責任を全うしようという積極的な取組みで大変参考になる発表でした。

前日の2月12日に、公益認定等委員会内に設置された「公益法人の会計に関する研究会」は、各方面から寄せられた公益法人会計に関する諸課題についての1年半にわたる検討内容を報告書(案)にまとめHPに公開し、意見募集を開始しました。
報告書の中では、会計に関する諸課題に加え、「財務三基準についての解釈・適用」も含まれていますが、収入源が限定されている助成財団にとって極めて関心の高い「収支相償」については、まだまだ納得のいく内容ではないと判断しています。
特に、前記のように社会的責任をしっかり果たしていくために付加価値の高い助成事業へのチャレンジや価値の高い新たな助成事業、自主事業へチャレンジをするにはその前提として財政的な余力は絶対要件となります。
また、突発的事情により収入が激減することが生じた場合にも社会的責任を果たす観点から事業を継続していくための財政的余力も欠くことができません。
助成財団は、そのために公益目的保有資産を金融資産として取得し保有しておくことは必須の要件となります。今すぐの法改正が難しいとすれば、以上の観点から収支相償については更なる柔軟な運用を強く要望していきたいと考えます。

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