パブリック・サポート・テストと公益法人―税調最終整理案に疑問符-
認定特定非営利活動法人に対する寄附金について税額控除制度を導入するとともに、パブリック・サポート・テスト(PST)を含む認定要件とその手続きを大幅に改善することが10日発表の政府税制調査会の「要望項目等に関する最終整理案」で明らかになった。
テスト算式に絶対数基準(「3,000円以上の寄附者が100人以上」)の選択を可能とすること、実績値によらない仮認定制度の導入、認定機関を国税庁から都道府県に移管するなど抜本的な改正内容となっている。
PSTが実施されてすでに約10年、この間小刻みに改善はされてきたものの、特定非営利活動法人にとっては大変敷居の高い基準であり、わずか188法人しか認定されていない(平成22年12月1日現在)という使い勝手の悪いものであったが、今回の大改正により急速に認定特定非営利活動法人の数が増えるものと期待される。その点で、同じ市民社会組織として不特定多数の利益の増進のため活動する公益法人としても、もろ手を挙げて賛意を表するものである。
ところが、公益法人にとって実は一つ大きな問題がこの「税制改正大綱案」に含まれている。公益法人にもPSTをかけるという案だ。
PSTは、もともと米国内国歳入庁が寄附金等優遇団体として認定するために1969年の非営利団体税制改正時に発案された制度である。その趣旨は非営利法人の設立が州法により登記だけで簡単にできることから寄附税制を付与するためには、その活動が広く一般市民から支援されていることが必要という観点から導入されたものであり、日本においても認証という比較的簡単な手続きにより設立できる特定非営利活動法人に同様の趣旨で採用されているものである。認定要件にはこのPSTだけでなく、特定者への利益供与の制限、役員の親族・同一団体制限、事業活動の制限、情報公開等の要件を満たすことが求められている。
他方、公益法人はまず一般法によりガバナンス構造が重装備すぎるぐらいにしっかりと構築されており、さらに公益認定法令やガイドライン等により公益目的事業の内容、各機関の設計と役員等の資格、収支相償・公益目的事業比率・遊休財産規制などの財務基準、情報公開など規制の網が細かくかけられており、公益認定取消しの際における公益目的事業財産の公的団体への贈与義務なども規定されている。また、公益認定は市民を代表する第三者機関が事業の公益性等を判断した上で認定する仕組みとなっている。
つまり、公益法人の事業、組織、財務等は、上述の厳しい認定基準により市民への説明責任や透明性が確保されており、またその事業が真に不特定多数の市民の利益に合致することについて、第三者機関により担保されている法人である。換言するならば公益法人は制度として市民のサポートをすでに受けている法人である。
他方、特定非営利活動法人はその根拠法たる特定非営利活動促進法により、誰が見ても公益法人にくらべ比較にならないほど緩やかな基準で設立運営ができ、それを補完するものとして税法上の認定制度が別建てで構築され、その中心的なものがPSTという仕組みである。つまり特定非営利活動法人法だけでは公益性を担保しきれないため、市民の支持を測る尺度を別に付加する必要性が不可避という事実に基づくものである。
このように、公益法人制度と特定非営利活動法人は法制度の仕組みが根底のところから異にするものであり、公益性があらゆる観点から見てすでに確保されている公益法人に対して寄附者の税額控除を受けるためには、PSTを付加するという案には誠に承服しがたい。
せっかく多大の労苦をかけ公益認定を取得し、今後一層社会に貢献しようと決意を新たにしている新制度の公益法人にさらに、屋上屋を重ねテストするという発想は是非とも考え直していただきたい。
