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2010年5月


「社会に美田を残す制度」の実現を ―ストック(資産)の公益流入を図る仕組み―

公益財団法人 公益法人協会 理事長 太田 達男

 経済・金融などの統計における日米比較において最も格差の大きいのは 非営利法人への個人からの寄附金だ。

 2008年度米国の個人生前寄附金は2,290億ドル(1ドル92円換算で約21兆円、以下同じ)、一方日本はどうか。国税庁統計による個人寄附金控除金額はわずか304億円と、実に米国は日本の約690倍という計算になる。もっとも国税庁統計は寄附金控除を受けた寄附金だけの計算であるから、国税庁統計に現れてこない寄附金について色々な推計があり得るが、よく用いられる推計によれば、2002年度において2,189億円という数字もある。仮にこの数字を使ったとしても米国は日本の約96倍となる。日米のGDP格差3対1を織り込んで、ざっと日本は国力に比べ寄附金は米国の30分の1という勘定になる。 

 もうひとつ見逃してならないのは、米国では相続財産寄附が2008年度226億ドル(約2兆790億円)であるのに対し、日本は2002年に公法協が情報開示請求により入手した金額は167億円と、時点の相違はあるものの、これまた124倍強の格差があることとなる。

 このような数字上はっきりした彼我の格差も強調され、近時寄附文化の醸成など各方面において真剣に議論が行われていることは周知のとおりであり、また「新しい公共」を支援奨励するための「市民公益税制」の最終報告書も近々発表になる予定である。

 筆者は寄附金支援税制としてフロー(所得)の優遇措置(税額控除、年末調整、特定非営利活動法人に対するパブリック・サポート・テストの緩和措置など)はもちろん必要と思うが、同時に1,400兆円を超す個人金融資産(ストック)の「公益の領域」への流入促進を図る税制構築も同時に実現するよう要望したい。

 1,400兆円の約3分の2は60歳以上の人が保有しているとのことであるが、少子高齢化社会においてこれら高齢層は「子孫に美田」を残したくても残す相手がいない、相続人等がいたとしても個人の価値観も多様化し「子孫に美田を残さず」という人も多くなってきている。これらの人々が「公益の領域(社会)」に「美田を残す」ことを奨励し、残された美田が公益のために有効にかつ確実に使われるシステムを考えるべきではないかとの思いから、公益法人協会では「社会に美田を残す」制度として、米国で有力な方策として活用されている「公益に財産を残す信託制度(Charitable Remainder Trust, Charitable Lead Trust)」の日本版を提言しているが、是非この実現を政府にお願いしたい。

(引用した統計等資料)
※米国計数はGiving USAニュースリリース(2009年10月)
※日本の寄附金控除は国税庁による統計年報平成19年版
※推計数値は、内閣府経済社会総合研究所ESRI Discussion Paper Series No.126

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