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2008年7月


固有財産と信託財産

理事長 太田達男

 5月号のコラムに引き続いて信託法理を持ち出して恐縮だが、信託の受託者は信託財産と固有財産の二種類の財産を所有している。信託財産は文字通り委託者から信託された財産であり、固有財産は受託者自身の所有する財産である。

 信託財産はその信託目的のみに使用され、また財産としての独立性があり、受託者自身の債権者や、他の信託財産の債権者から差し押さえられることはない。そして信託財産と固有財産は分別管理しなければならない。受託者が破産しても信託財産は破産財団には属さない。信託が財産の安全地帯と呼ばれる理由がここにある。一方、固有財産はもちろん、受託者の債権者から差押さえ可
能な一般財産である。

 公益法人の場合、基本財産や特定資産という概念があり、会計上も資産の部においてそのような表示が求められる。現行制度下でも退職給付債務に引き当てるべき資産や財団法人の基本財産に該当する資産は基本財産や特定資産と表示しているが、新制度では公益認定に係わる財務基準上、公益目的不可欠特定財産、公益目的保有財産、特定費用準備資金、資産取得積立資金などの概念が
創設され、これらは貸借対照表資産の部や財産目録において、〇〇目的基本財産、〇〇目的特定資産などと表示することが求められる。そして、これらの財産はその目的に従って使用処分しなければならい。つまり使用目的が特定されており、それ以外の使用は原則禁じられているわけだ。

 先に見た信託財産と多少類似しているところは使用目的が限定されている点だが、異なる点は財産の独立性が全くないことである。したがって、公益法人に債務不履行があった場合、債権者はその財産を差押さえられる。万一法人が破産した時は特定財産であっても破産財団に属し、債権者に分配される。つまり、貸借対照表や財産目録において如何に特定目的の財産であることを表示しても、内部的な規範に過ぎず、対外的には意味がなくすべてが固有財産ということになる。このように公益認定法上定められた特定の財産であっても、対外的には差異がないという意味で、信託財産とは異なり独立性のない財産である。

 このような財産が特定目的のために使用され、毀損することなく管理されるためには、究極的には当事者(役職員)の自覚に待たざるを得ないのであり、受任者(フィディシュアリー)としての使命感と倫理観こそ、今後の公益法人運営に強く求められる素質と思う。

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