固定資産税をめぐる米国での議論
先月久しぶりにニューヨークを訪問した際、新聞で興味深い記事を見つけた。それは、公益法人(charitable nonprofits)の不動産への課税に関する議論を扱ったものである(The New York Times, Nov12,2007)。
州によって詳細は異なるものの、米国では公益法人の保有する不動産は原則非課税である。そしてこれによって免除された税は巨額にのぼる。ある調査によれば、米国23都市での免税額は、年に15億ドル(約1650億円)に達し、これは平均して市の財政の1.2%に相当するという。免税の恩恵を受けてい
るおもな団体は病院と大学であるが、たとえばロサンゼルスにあるゲッティ美術館のように単体で20億円もの固定資産税が免除されているケースもある。
逼迫する自治体財政にとってこれは結構な負担となっており、免税は是か非かという議論がいま改めて各地で起こっている、というのがこの記事の趣旨である。免税は、コミュニティへの貢献と引き換えに得られる特権であり、これはいわば契約(covenant)なのだとする公益法人側の主張と、そうはいっても公益法人も自治体の提供するサービスを受けているではないかという当局の言い分は、いくぶん論拠がすれ違っているようでもある。
記事では、公益法人と自治体が妥協点を探ろうとする動きの例として、同じ大学でもアカデミックな活動に使用されている不動産と、他の用途に使用されている不動産とを分別して取り扱うことを検討しているケースや、固定資産税の代わりに、ごみ収集等のサービスの対価として市に別途料金を支払
う公益法人のケースが紹介されている(いずれもボストン)。
現在わが国の税法では、公益法人等の所有する不動産に対しては原則課税であり、学校、幼稚園、博物館などの非課税案件が個別限定的に例示されているのみである。私の所属する財団が、芸術活動支援という本来目的のために所有・運営している演劇稽古場にも、もちろん固定資産税はフルにかかっている。
今回発表された与党税制改正大綱では、公益社団・財団の税制および寄付税制等については大きな進展が見られたものの、固定資産税については残念ながら基本的に従来の措置を踏襲した形となった。米国の、この記事のようなことが議論になる日が、日本にも早く訪れてほしい気がする。
(公益法人税制対策委員会委員長)
