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2007年6月


楽しく寄付をさせるプロ

財団法人 セゾン文化財団  常務理事 片山正夫

   寄付税制が整備されれば、本当に日本人は寄付をするのだろうか? 幾度となく口にされてきた疑問である。おそらく制度は必要条件ではあるが十分条件ではないのだろう。寄付文化が実際に根付いていくためには、ほかの条件も必要だ。私はその条件のひとつに「楽しんで寄付をさせる専門家」の出現を挙げたい。

 私もお付き合いさせていただいている柴山哲治氏はそんな「専門家」のひとりである。本職は企業向けアートコンサルティング、CSRコンサルティング、若手芸術家のデビュー支援、それに必要な教育事業を含む総合的なアートプロデュース事業等を手がける会社((株)AGホールディングズ)の経営者だが、かつてロックフェラー家の資産管理に携わった経歴があり、芸術家の育成やフィランソロピーにも強い関心を持っている。現在は京都造形芸術大学でも客員教授として将来のアーティストに向けたキャリア教育のコースの教鞭をとっている。

 とくに注目したいのは、氏が社会貢献のための寄付集めに、もうひとつの前歴であるサザビーズ・ジャパンの社長時代に身につけたオークションという「特技」を活かしている点である。

 一度、六本木の森美術館で行われたチャリティ・オークションで、氏のオークショネアぶりを見たことがある。ハンマーを手に、バイリンガルで次々と美術品をセリにかけていく。テンポの良い仕切りに、会場の熱気はぐんぐん高まっていく。チャリティ特有のご祝儀感覚も手伝って、予想落札価格を大きく上回る値がつくものもある。パドルを挙げ続ける参加者は会場の注目を一身に集め、やがて賞賛の拍手を浴びる。結局ほぼすべての美術品が競り落とされ、収益金は環境NPO等に寄付された。

 印象的だったのは、会場の誰もがその場を純粋に楽しんでいることであった。若い参加者も多く、値段も数万円程度のものから出品されるので、ちょっとおしゃれなエンタテインメントに参加している感覚なのである。そんな雰囲気を作り出せたのは、他でもなく柴山氏の手腕であった。

 「困っているから助けてください」「良いことをしているので協力してください」だけが寄付集めの手法ではない。それでは参加者は限られる。これから寄付の裾野を広げていくために最も有効なキーワードは、寄付を「楽しむ」ということではないか。そして、そこには柴山氏のような寄付を「楽しませる」プロがどうしても必要なのだ。


(公益法人税制対策委員会委員長)

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