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2003年12月


角を矯めて牛を殺す - 「 内部留保 」 の問題-

理事長  太田 達男

 私は現在の「内部留保規制」には、3つの問題点があると考えています。

 第一に、もともと公益法人も継続する組織ですから、手厚い内部留保はむしろ健全性の指標という側面もあります。もちろん、受益者たる市民や寄付者の立場からは過度の内部留保は期待利益を損なうわけですから営利企業のように多々ますます弁ずと言うわけではありませんが、少なくともその多寡を論ずるときには双方向からの視点で考える必要があります。

 米国においてNPOの内部留保は年間支出の2~33倍が妥当とする評価機関の基準があること、英国においても内部留保の水準は理事会など内部自治により、双方向の視点から方針を定め、公表すべきというチャリテイコミッションの指導があることなどが参考になるでしょう。少なくとも年間支出の30%以内という水準では財務上むしろ不健全な水準です。

 第二に、算式が不合理であることです。本来企業における内部留保は利益の蓄積を意味しますが、指導監督基準の算式では手許余剰資金を内部留保としていますから、将来にわたる運営資金として寄付された金銭のようにいわば資本的取引に相当するものや、年度末に収入となった会費、資産運用益まで分子に含まれ、内部留保率を押し上げてしまいます。内部留保率が高いとされる助成財団の多くはこのケースに該当します。

 第三に、主務官庁の現場における指導や指摘が機械的であり、会計的にも正確でない場合があることです。そもそも、指導監督基準の「運用指針」も「当該法人の財務状況等によっても異なるものであり、一律に定めることは困難」として、本来は手許余剰資金を構成する資金の中身を分析しその適否を判断する弾力的取り扱いを予定しているにも関わらず、現場ではとかく機械的に30%を適用しがちです。

 平成15年度「公益法人白書」で内部留保が827億円にも上ると指摘された新潟県のある公益法人の場合、財務書類でみると、891億円の保証債務と保証見返り勘定が同額で負債/資産に計上されており、本来なら内部留保を計算するとき、相殺することが正しいにもかかわらず資産のみ計上し保証債務を控除しなかったのではないかと考えられます。このように誤った数字だけが一人歩きし、公益法人が巨額の内部留保を溜め込んでいる事例に使われると思うと残念でたまりません。

 公益法人として、優遇税制を受けながら収益事業の利益を過剰に溜め込むことはもちろん許されるべきではありません。何らかの制限が必要であることは論を俟ちません。

 しかし、上記のような問題点を抱えながら画一的に現在の指導を続けることは、健全な公益法人に大きな悪影響を及ぼします。

 角を矯めて牛を殺さぬよう、速やかな改善を求めたいものです。

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