10 移行認定申請先の行政庁について
認定申請のポイントシリーズ第10回
特例民法法人が移行認定申請を提出する先の行政庁は、ご承知の通り①2以上の都道府県の区域において事務所を設置する法人又は②公益目的事業を2以上の都道府県の区域内において行う旨を定款(または定款の変更の案)で定める法人は内閣総理大臣、①及び②に該当しない法人はその事務所が所在する都道府県知事とされています(整備法第47条)。
簡単なルールのようですが、実際にはいずれが所轄するかを巡って色々疑問が出ているようです。今回のポイントシリーズはこの点を解説します。
1 基本的な考え方
新公益法人制度はできるだけ旧所轄官庁の裁量等による不明朗な行政指導を排除し、明確な基準で認定手続きを行うことを目的としており、申請当事者間で極力疑念が出ないよう申請先行政庁の決定においても外形的な基準で定めることになっています。
2 外形的基準
1)申請先行政庁に係る①の基準(事務所)は、登記されているかどうかで決まります。登記をしていない支部や連絡事務所などが都道府県の外にあっても関係ありません。その意味でこの点は疑問の余地がありません。
2)②の基準(事業を行う地理的範囲)も外形的に判断されます。すなわち、定款(または定款の変更の案)において、公益目的事業を2以上の都道府県の区域内において行う旨を定款で定めているかどうかで決まります。要は申請法人が公益目的事業をどの区域で行うかどうか自主的に判断して定款で規定することによって申請先行政庁が決まりますから、本来は疑問の余地がないはずです。
しかし、行政庁は定款規定の記載にかかわらず、公益目的事業の実施の実態が伴わなかったり不明確であったりする場合は実態に応じた申請を指導することがあるとしています(FAQⅠ-9①、③)。実際には色々なケースがあり申請する法人側としては戸惑うことがあり、また、行政庁や旧主務官庁の指導についても必ずしも明確かつ統一的な基準が示されていないため、混乱が生じている例が公益法人協会にも報告されています。
3 事業区域を定款で規定するにあたっての留意すべき事項
そこで、法人が定款上の事業区域を規定するにあたってよく問題となる点を認定事例等から整理しました。
1)助成・奨学金事業の事例
事務所は一つの都道府県内の一か所であっても、その募集対象である大学など学校や研究機関が他都道府県に存在する場合は、公益目的事業を2都道府県以上において行うものとして、定款でその旨規定します。
2)美術館・資料館等運営事業の事例
一都道府県に美術館等があり、各都道府県から来館者を迎えている場合でも、その美術館が存在する都道府県の区域において公益目的事業を行うとして定款で規定します。
ただし、その法人が美術館運営事業とは別に美術等に関する積極的な普及啓蒙活動等を広域の区域で展開するような事業を行っている場合(美術賞の贈呈、研究者への助成など)は、公益目的事業を2都道府県以上において行うものとして、定款でその旨規定します。
3)オーケストラなど芸術団体
1都道府県を本拠とするオーケストラなど芸術の実演団体は、他都道府県で公演することも多いと思われますが、主として公演する地域が一つの都道府県である場合は当該本拠地の都道府県を活動区域として定款で定めます。
4)全国に会員が存在する社団法人
会員(社員)が全国に存在する法人であっても、その公益目的事業の活動がもっぱら1都道府県内に限られるような場合は1都道府県を区域として定款に規定します。(ある大学の同窓生や特定の都道府県出身者を会員とする法人が母校大学を対象とする奨学金支給事業や郷土を対象とする地域振興事業等の公益目的事業を行う場合)
5)将来公益目的事業を他の都道府県でも行うことを予定している法人
(1)申請時点では実施していない事業を公益目的事業として申請する法人で、その追加する事業を他の都道府県でも実施を予定する法人は公益目的事業を2都道府県以上において行うものとして、定款でその旨規定します。申請時点では実施していない事業であっても、その内容が具体的であり近い将来実施することが機関決定されているなどの場合は、申請することが認められています。
(2)申請時点では公益目的事業を1都道府県の区域で実施している法人が、近い将来他都道府県に実施範囲を拡張することが具体的な実施計画として機関決定されている場合は、公益目的事業を2都道府県以上において行うものとして、定款でその旨規定します。
6)収益事業等を他都道府県でも実施している法人
事業実施区域の基準はあくまで公益目的事業の実施区域で判断され、収益事業等の実施区域は関係ありません。収益事業等は都道府県を越えて展開している場合であっても、公益目的事業が1都道府県内である場合には申請先の行政庁は都道府県知事ということになります。
4 定款規定
ここで再び定款の規定に戻ります。定款の規定は法人にとって憲法ともいうべき経営の根本原則を定めた文書です。明らかに法令等に違反する条項の修正指導は当然ですが、それ以外の条項、文言については法人が自主的な判断により作成すべきものです。事業の実施区域についても同様です。前述の通り、行政庁は定款の記載内容によって所轄の行政庁を機械的に決めるということになっており、事業区域を定款上どのように定めるかはあくまでも法人の自主性が尊重される建前になっています。行政庁による事業区域に関する定款の定めに対する指導もその建前を前提としつつ、よほど実情に合わない場合に限り変更が指導されるものと理解してください。また、A行政庁がこの申請先はB行政庁であると指導する場合には、申請法人がたらい回しされ混乱を生じさせる恐れがありますから、A,B行政庁間で調整を済ませ、申請法人に迷惑をかけない配慮が必要です。







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