7 助成金・奨学金の募集・選考方法
認定申請のポイントシリーズ第7回
助成金・奨学金は社会的にニーズの高い分野に原則無償で資金を提供する活動であり、一般的に公益性の高い事業ですが、特定の者に利益が誘導されないよう、公正性を確保する工夫をしているかどうかがポイントになります。ポイントシリーズ第7回は、この点を考えてみたいと思います。
なお、助成金については大別して①応募型(推薦を含む)の助成と、②応募を経ない能動型助成の二つのタイプがありますが、いずれにも共通して重要なことは、上記のとおり、公正性確保の工夫だと考えます。
1 応募型
応募型は募集と選考の2段階において公益性を説明する必要があります。
(募集方法)
公益認定等委員会ガイドライン[参考]の「公益目的事業のチェックポイントについて」において、「13助成(応募型)」が説明されていますが、募集方法に関連して特定の学校を対象とする研究助成や奨学金事業は、公益性がないという誤解がまだ一部にあるようです。
しかし、特定の大学・研究機関を募集対象とする研究助成金事業や特定の学校だけを募集対象とする奨学金制度については、特定の対象であるからという理由だけで決して公益性を否定されるものではありません(第21回公益認定等委員会の議論、当ブログ09年9月11日付日記)。
昨年9月に追加されたFAQⅨ-⑨の肯定的説明は、特定校在学生に対する奨学金の事例ですが、助成金も同様に考えられます。
助成金募集方法については、その他、学会や関連分野の中間支援組織に推薦を依頼する方式も従来からあるようですが、これについてもその推薦機関が中立的で公正な機関である限り問題ないと考えます。
また、一部には評議員、理事などからの推薦も受け付けている事例があるようですが、これについては慎重に考える必要があると思います。特に理事の場合、選考の最終決定をする機関は理事会であるため、本人が所属している(あるいは所属していた)大学・研究機関の研究者を推薦する場合、必ずしも明確に利益相反取引に該当するとは言いきれませんが、「李下に冠を正さず」という観点から、実務上は評議員推薦も含め避けた方が無難と考えます。
(選考方法)
応募者、被推薦者の選考については公正な選考手続きをとることが核心です。公正な選考手続きを経ない場合、特定の者への利益供与と判断される恐れがあります。通常は理事会の諮問機関としての選考委員会を設け、この委員会での公正な審査を経て答申があり、答申を受けた理事会が執行機関として最終決定するというのが最も望ましい選考プロセスかと思います。
しかし、小規模な法人では選考機関を別に設置することが過大な負担になる場合もあり、理事会が直接審査を行い決定することも、公正性を担保する工夫(例:助成先の役員と当該法人の理事が兼務している場合には選考に加わらないように選考規程を定めている等)をしている限り認められ得るものと思います。
さらには、特定の学校等に選考を委ねていて、法人としてはこの特定の学校等の選考結果に従って助成先を決定する場合もありますが、この場合は「13助成(応募型)」で説明するのではなく、「18その他」で説明するのが適当であろうと考えます。
2 能動型
また、助成財団によっては英米でよく行われているように、研究開発すべきプログラムを具体的に定め、この事業を実施するに最も適切な団体を探し、ここへ所要資金を提供する場合があります。つまり、応募を待つ受け身の姿勢ではなく、財団が設定した特定のプログラムを遂行できる能力のある特定の団体を選抜し、助成等の資金的支援をするケースです。このような能動型の助成についてはチェックポイント「18その他」で説明することとなりますが、①そのプログラムの実施が社会の利益の促進に寄与するものであること②助成先の決定方法・過程が公正な手続きを経ており、特定の者への利益供与でないことを明瞭に説明できれば公益性が認められ得るものと考えます。







これほど欠陥の多い法制度ですが、悪法も法なりとして少しでもマシな運用を意図しておられる公法協の立場は理解できないではありません。ただ願わくば同時に法改正、せめて改正に向けての機運が整う間、経過期間延伸に向けての努力をお願いしたい所です。ちなみに今回の「助成」の「公正」の解釈については、異論があるのみならず、誤った解釈であると考えます。参考までにhttp://airiyama.exblog.jp/10771436/での議論をお読みください。
教えていただきたいのですが、
「選考の最終決定をする機関は理事会である」
とありますが、どこにこんな規制があるのですか?
法人自治に属する問題ではないでしょうか?
また、「選考委員会」というのも、法令やガイドラインにありません。「望ましい」というのは、誰にとって望ましいのでしょうか?
入山映さん、
いつもながら、貴重なご意見賜りありがとうございます。
すでにはじまっている制度を期限延長だけで、申請をストップさせることは、不可能と思います。
とすれば、すでに動いている申請審査を少しでも民間の立場に立った本来あるべき姿に軌道修正してもらう運動の展開も必要と考えます。もちろん同時に財務基準など問題の多い事項については法改正を早期に実現する運動も必要です。つまり、両面作戦での運動こそ今、多くの方々から公法協に求められていることではないかと考える次第です。どうかこの点のご理解をぜひお願いしたいと存じます。
なお、「公正な」というのは、あくまで法人が「公正な」と考える選考方法であり、アプリオリにこれが「公正な」というわけではありません。しかし、そこの判断は最終的には公益認定等委員会が判断する仕組みになっていますから、委員の方々が納得しなければどうにもしようがありません。その意味でいくつかの事例を紹介しているもので、これだけが「公正な」というわけではありません。
なお、ご指摘のブログを拝見しました。その論旨については全く賛成です。
新設財団計画中 さん、
1理事会の役割について
「理事会が執行機関として最終決定するというのが最も望ましい選考プロセス」というのは、一般法人法の当然の帰結と解釈しています。助成や奨学金支給というのは法人の財産(資金)を無償である人に贈与する行為ですから、事業執行の機関である理事会が権限と責任を有しています。理事会がその権限と責任を他の機関(選考委員会のようなもの)に100%委ねるということは、法律上あり得ないことと考えます。たとえ、事実上100%選考委員会などの推薦(答申、提案など)を入れるにせよ、理事会で決議するということが必要と考えます。
2選考委員会について
選考委員会はもちろん法定の必置機関ではありません。しかし、当該助成対象の領域についてより専門的・高度な知識が必要な場合、そのような知見を有する専門家に審査・選考をお願いするということが、実務慣行としても一般的です。もちろん、その必要がないと法人が判断すればそのような機関を設置しなくてもよいわけです。
なお、誰にとって望ましいかということですが、当該法人にとって望ましい、そして利益を受ける人々(たとえば応募者)にとっても望ましいという意味です。
早速のご回答有難うございます。しかし、可能ならば、もう少し、素人にもわかるようにお答えいただけませんか?
1.全国から候補者を集めた、賞金付きのコンクール等を開催することもありますが、その場合も「法人の財産(資金)を無償である人に贈与する行為」ですから、理事会を開くことなく決定することは「法律上あり得ないこと」なのでしょうか?
今一度伺いますが、法規制としてそのようなことがあるのでしょうか?それとも「解釈」というお言葉をお使いなので、個人的な法解釈を表明されたという理解でよろしいのでしょうか?
2.「誰にとって望ましいかということですが、当該法人にとって望ましい」とのご回答ですが、どうしてそのようなことが分かるのでしょうか?この部分は、とりわけ理解できません。法人の価値観に属することではないでしょうか?
頓珍漢な質問かもしれませんが、よろしくお願いいたします。
新設財団計画中さん、重ねてのご疑問を頂戴しありがとうございます。
1 私は理事会は法人にとって唯一の執行決定機関であり、奨学金の支給、助成金の贈呈、表彰金の贈呈など法人にとって大変重要な事項は、少なくとも形式的にはそれらの受贈者を理事会が最終決定するべきと考えています。形式的にはというのは、専門家集団(選考委員会など)の意見を100%尊重するにせよという意味です。
もちろん、コンクールなどにおいても専門家である審査員が高い知見に基づいて受賞者をその場(会場)で決定することは良くあることですが、それはそのコンクールにおいて審査員に受賞者を決定すべき権限を理事会から授権しているものと解されます。しかし万一何か問題が発生すれば責任を負うのは理事会だと思います。
もちろんこの考え方はストレートに条文が一般法にあるわけでなく、一般法が予定している各機関の権限と責任に関する法人のガバナンス(規律)を総合しての私の判断です。
2 「法人にとって望ましい」ということは、法人のガバナンスとして望ましいあり方という意味です。
もちろん、以上の考え方はあくまで私見ですから、異なる意見があり得るとは思いますが、私はこう考えるということで、お答えする次第です。
素人が口を挟んですみません。
新設財団計画中さんがはっきりとした根拠を求めて見えるようなので、一言付け加えさせていただきます。
内閣府公益認定等委員会の「移行認定又は移行認可の申請に当たって定款の変更の案を作成するに際し特に留意すべき事項について」では、Ⅱ2で、法人の運営に際し、法律に根拠のない任意の機関(会議体)を定款に設けて運営する場合には、当該の名称、構成及び権限を明確にし、法律上の機関である理事会等の権限を奪うことのないように留意する必要があるとしております。
これは、定款審査の基準ですが、定款以外の規則を作成するにあたっても、理事会の権限を奪うようなことはできないと解釈すればよいかと思います。
結局、根拠も規制もないということ。
効率的、効果的に公益活動を行うということに、最大のプライオリティをおかないと、民間が行う意味がないということです。