8 基本財産と特定資産の意義

認定申請のポイントシリーズ第8回

 元々旧民法において「基本財産」という法律用語はなく、「基本財産」の処分について主務官庁の承認が必要というのも、ごく一部の主務官庁が省令で定めているに過ぎませんでした。
 また、定款(旧寄附行為)においても、古い法人の中には法人運営上不可欠な財産を「元資金」と称しているところもありました。
 しかし、何時の頃か詳細に調べていませんが、財団法人の実務慣行として「基本財産」という用語が定款や会計上用いられるようになり、旧法下では「基本財産」は財団法人の法人格が与えられる基礎となる財産であり、その処分は主務官庁の認可が必要というのが一般的な規律として理解されるようになりました。また、指導監督基準により基本財産の運用対象については郵便貯金、定期預金、国債等元本回収が確実なものとされていました。
 しかし、新制度では「基本財産」は従来の持つ意味と大きく変わりました。ポイントシリーズ第8回はこの点を取り上げます。

1 一般法人法における基本財産の法的性格
 財団法人において、「目的事業に不可欠なものとして定款で定めた基本財産」があるときは、理事は「定款で定めるところにより、これを維持しなければならず、かつ、目的事業を妨げることとなる処分」をしてはならないと規定されています(一般法人法第172条第2項)。「基本財産」の規定はこれだけで、とくに省令などへの委任規定はありませんから実務的には①「目的事業に不可欠なものとして定款で定めた基本財産」があるかどうかは法人自らが判断することである(換言すれば、従前と異なり財団法人でも「基本財産」というものはなくてもよい)②仮にそのような「基本財産」を定款で定めた場合、その維持・処分について理事に課せられた注意義務と責任の具体的内容は、法人の判断により骨子を定款で定め、詳細を規則等で決めるなど一定の配慮を要するという2点に留意することが必要です。

2 公益認定法と基本財産の関係
 公益認定法では「基本財産」という用語は一切使用していません。したがって、公益認定申請書や定期提出書類にも「基本財産」「特定資産」を記載する欄はありません。公益認定法では財産に関し「公益目的事業財産」とか「公益目的保有財産」など色々な用語を用いて認定基準や認定後の遵守基準を定めていますが、それらはすべてどのような使用目的のための財産であるかという実質基準で規定されており、「基本財産」や「特定資産」という抽象的な名称の用語には全く法的な意味での関心を示していません。したがって、「基本財産」や「特定資産」とすれば遊休財産から自動的に控除されるなどということは決してありません。あくまでもその中身で判断されることとなります。
 ただ、ガイドラインにおいて「公益目的事業に不可欠な特定の財産(公益認定法第5条第16号)」があれば、それは前述の一般法人法第172条第2項の「基本財産」とし、計算書類上も「基本財産」として表示することを求めています。また、特定費用準備資金と資産取得資金は計算書類上「特定資産」と表示することとしています(ガイドラインⅠ-15(2)、Ⅰ-7(5)-②)。

3 定款と「基本財産」の関係
1)内容の記載
 前述のように、公益認定法上の「(公益目的)不可欠特定財産」は必ず基本財産とし、定款(付則の別表を含む)に記載することが求められていますが、その他の一般法人法第172条第2項の「基本財産」を規定する場合、その規定の仕方は大別して次の二通りの方法があります。
① 「基本財産」の具体的な内容を別表に記載する
② 定款では具体的内容を記載せず、別に評議員会(または理事会)で決議した財産を「基本財産」とする趣旨の規定を設ける
 ①は土地建物など実物資産を基本財産とする場合は有効ですが、金融資産などその内容が変化する可能性のある財産を「基本財産」とする場合は②が便利かと思います。いずれにせよ、財産の内容や将来の見通しなどに応じて法人が自由に①又は②を選択すればよいと思います。
2)管理・運用・処分に関する規定
 「基本財産」の管理・運用・処分についての手続き規定を設けるかどうかは任意ですが、実務的には定款で原則を定め詳細を規則で規定することをお勧めします。もちろん、運用対象も法人の判断により定めることとなります。

4 社団法人と「基本財産」
 一般法人法第172条第2項の「基本財産」は財団法人に関する規定です。しかし、(公益目的)不可欠特定財産を「基本財産」とする前掲ガイドラインは社団法人にも適用するものであり、さらに、社団法人において従来基本財産としていた財産は移行後も引き続き定款上効力を有するものとしています(FAQⅥ-3-①2(2))。したがって、社団法人も「基本財産」を定款上及び計算書類上任意に用いることができると解されます。

5 会計と「基本財産」の関係
 上記1~4によって法人が基本財産または特定資産を有するときは貸借対照表の固定資産を、基本財産、特定資産、その他固定資産に分け計上します。
 なお、寄付によって受け入れた財産で指定正味財産に計上されるものは基本財産または特定資産に、また特定目的のための金融資産を保有する場合は当該目的を示す独立の科目により特定資産に計上することが妥当ですとされています(公益法人会計基準注解(注4))。

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申請書類公開サイト:お知らせします

 弊公益法人協会は認定申請書類をすべて本サイトで公開していることはご存知かと思いますが、外にも少数ですが全部または一部の申請書類を公開しているサイトもありますから下記にお知らせします。
 このブログをご愛読いただいている皆様にも、首尾よく認定・認可を取得された暁には、お差支えない範囲で申請書類を公開していただければ、後に続くすべての法人に大変参考になると思います。是非よろしくお願いします。

・公益財団法人 助成財団センター
 (申請書類のページはこちら
すべての申請書類を公開しています。とくに、事業型財団や助成財団に参考になります。

・公益財団法人 ニッセイ文化振興財団
 (申請書類のページはこちら
申請書別紙1、2を公開しています。とくに舞台芸術公演、運営等の法人に参考になります。

・鹿児島県公益認定等審議会
 (申請書類のページはこちら
公益法人information(国・都道府県公式公益法人行政サイト)の鹿児島県サイト。
鹿児島県では公益認定に係る審議会資料で、申請法人の概要説明書として申請書別紙1,2を公開しています。
第5回鹿児島県公益認定等審議会:公益財団法人 昭和会(とくに医療事業実施法人に参考になります)
第6回鹿児島県公益認定等審議会:公益社団法人 鹿児島県理学療法士会(とくに職能組織の法人に参考になります)

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7 助成金・奨学金の募集・選考方法

認定申請のポイントシリーズ第7回

 助成金・奨学金は社会的にニーズの高い分野に原則無償で資金を提供する活動であり、一般的に公益性の高い事業ですが、特定の者に利益が誘導されないよう、公正性を確保する工夫をしているかどうかがポイントになります。ポイントシリーズ第7回は、この点を考えてみたいと思います。
 なお、助成金については大別して①応募型(推薦を含む)の助成と、②応募を経ない能動型助成の二つのタイプがありますが、いずれにも共通して重要なことは、上記のとおり、公正性確保の工夫だと考えます。

1 応募型
 応募型は募集と選考の2段階において公益性を説明する必要があります。
(募集方法)
 公益認定等委員会ガイドライン[参考]の「公益目的事業のチェックポイントについて」において、「13助成(応募型)」が説明されていますが、募集方法に関連して特定の学校を対象とする研究助成や奨学金事業は、公益性がないという誤解がまだ一部にあるようです。
 しかし、特定の大学・研究機関を募集対象とする研究助成金事業や特定の学校だけを募集対象とする奨学金制度については、特定の対象であるからという理由だけで決して公益性を否定されるものではありません(第21回公益認定等委員会の議論、当ブログ09年9月11日付日記)。
 昨年9月に追加されたFAQⅨ-⑨の肯定的説明は、特定校在学生に対する奨学金の事例ですが、助成金も同様に考えられます。
 助成金募集方法については、その他、学会や関連分野の中間支援組織に推薦を依頼する方式も従来からあるようですが、これについてもその推薦機関が中立的で公正な機関である限り問題ないと考えます。
 また、一部には評議員、理事などからの推薦も受け付けている事例があるようですが、これについては慎重に考える必要があると思います。特に理事の場合、選考の最終決定をする機関は理事会であるため、本人が所属している(あるいは所属していた)大学・研究機関の研究者を推薦する場合、必ずしも明確に利益相反取引に該当するとは言いきれませんが、「李下に冠を正さず」という観点から、実務上は評議員推薦も含め避けた方が無難と考えます。
 (選考方法)
 応募者、被推薦者の選考については公正な選考手続きをとることが核心です。公正な選考手続きを経ない場合、特定の者への利益供与と判断される恐れがあります。通常は理事会の諮問機関としての選考委員会を設け、この委員会での公正な審査を経て答申があり、答申を受けた理事会が執行機関として最終決定するというのが最も望ましい選考プロセスかと思います。
 しかし、小規模な法人では選考機関を別に設置することが過大な負担になる場合もあり、理事会が直接審査を行い決定することも、公正性を担保する工夫(例:助成先の役員と当該法人の理事が兼務している場合には選考に加わらないように選考規程を定めている等)をしている限り認められ得るものと思います。
 さらには、特定の学校等に選考を委ねていて、法人としてはこの特定の学校等の選考結果に従って助成先を決定する場合もありますが、この場合は「13助成(応募型)」で説明するのではなく、「18その他」で説明するのが適当であろうと考えます。

2 能動型
 また、助成財団によっては英米でよく行われているように、研究開発すべきプログラムを具体的に定め、この事業を実施するに最も適切な団体を探し、ここへ所要資金を提供する場合があります。つまり、応募を待つ受け身の姿勢ではなく、財団が設定した特定のプログラムを遂行できる能力のある特定の団体を選抜し、助成等の資金的支援をするケースです。このような能動型の助成についてはチェックポイント「18その他」で説明することとなりますが、①そのプログラムの実施が社会の利益の促進に寄与するものであること②助成先の決定方法・過程が公正な手続きを経ており、特定の者への利益供与でないことを明瞭に説明できれば公益性が認められ得るものと考えます。

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6 資産取崩しによる事業実施は必ずしも不健全とはいえない

認定申請のポイントシリーズ第6回

 株式会社は利益を上げることが至上命題ですから、赤字決算は財政的に不健全ということになります。赤字決算が続き純資産などの内部留保を取り崩すことは業績不振ということとなり、上場企業であれば株価や格付けの下落を招き信用力が低下します。
 しかし、公益法人のような非営利法人は、もちろん利益を上げることが目的ではなく、目的事業を遂行することが使命です。したがって、上記のような営利法人における赤字の持つ意味とは異なります。ある時期には基本財産や特定資産などを取り崩しつつ公益目的事業を実施することは公益法人の世界ではよくあることで、それをもって直ちに財政的基礎が脆弱ということにはなりません。たとえば、超低金利下における現状では、運用益だけで事業を実施することは困難な場合があり、また新たな寄附金などの収入を調達することもできない場合に、一定の事業水準を維持することを優先し、資産を取崩すことを決断する場合もあります。このような決断は、資産保持を優先し公益目的事業を僅かの収入の範囲内に収め損益の帳尻を合わせるよりは、はるかに受益する社会にとっては利益の増進につながるものです。
 財団法人では存立(存続)期間を定款で決めることも法律上認められており、出捐した財産を一定期間で使い切り、財団の使命を終えることすら想定しています。
 それでは存立期間の定めのない法人において、そのような資産取崩しが続くと、いずれは破綻する(解散)ではないか、それは経理的基礎が脆弱ということにならないかと考える人もいるかもしれませんが、資産取崩しの効果と法人の存続について熟慮の上法人が判断することで、まさしく法人自治の領域の問題です。
 よく公益認定申請時の収支予算がたまたま赤字であるため、経理的基礎が不健全という烙印を押されないか心配する法人がありますが、赤字の原因とその対応策の説明に合理性があれば、赤字であることだけをもって認定されないというようなことはありません。
 もちろん、収益事業等が赤字基調でありその赤字のため法人全体として損失の状況が続いているような場合には「収益事業等を行うことによって公益目的事業の実施に支障を及ぼすおそれ」(公益認定法第5条七号)があると判断される可能性があることにも留意してください。
 また、基本財産や特定資産の取崩しを含む管理方法について手続き等の要綱を事前に定めておくことが必要ですし、さらには財産が減少しその結果目的達成不能による解散や、財団法人の場合純資産が2事業年度連続して300万円を下回ることによる解散などが発生する事態も十分考慮に入れておく必要があります。

by 公益法人協会   |  (0)