ジョイセフは日本での役割を終えたランドセルをアフガニスタンの子どもたちに贈る活動を行なっています。皆様のご支援のお蔭で、2004年から今までに15万3,241個のランドセルを届けることができました。寄贈者はランドセルと共に、ランドセル1個当り1800円の寄附金をお願いしています。この寄附金は横浜の倉庫でランドセルを保管し、検品作業、通関業務を経て横浜港から海上輸送でパキスタンのカラチ港で陸揚げをして、陸路でアフガンとの国境のカイバル峠を越え、アフガニスタン・ナンガハール州の村々の小学校まで届ける輸送経費です。現地での配付には州の教育省、校長、担任の先生、村の指導者が立会います。ランドセルの中は空いていますので、未使用のノートや鉛筆などの学用品も一緒に入れるようお願いしています。アフガンはイスラム国ですから、ランドセルの裏地に豚皮があるものは宗教上の理由で使えないため検品で除きます。ダンボール箱に6つずつ梱包し、鋼鉄製の40フィートコンテナ1つにつき3120個のランドセルを詰めます。

ジョイセフ②

(横浜の倉庫でランドセル検品)

 

母子保健の活動をしているジョイセフがランドセルをアフガンの子どもたちに贈る理由は何ですかという質問を受けることがあります。アフガンの妊産婦死亡率は出生10万対400(世界人口白書2014)であり、日本の妊産婦死亡率は出生10万対3.5(母子保健の主なる統計2014)です。日本の110倍以上です。アフガンでは12~13歳で結婚し出産する女の子が少なくありません。旧タリバン政権の時代に女子教育の必要性が認められなかったため15~24歳の女性の非識字率は68%という高さです。読み書きができない妊産婦や助産師は保健や衛生の知識や情報を印刷物から得ることができません。妊娠・出産・育児に適切な手当てができない状況です。「急がば回れ」という諺がありますが、読み書きの習得を広げて妊産婦死亡を減らそうと思い、地道な取組を始めました。

 

皆様の温かいお気持ちとご理解に支えられて、ランドセルを贈る活動は12年目を迎えることができました。継続は力なりという言葉を実感しています。ランドセルは一人ひとりに丁寧に直接手渡します。この「現地の子どもたち一人ひとりに直接手渡す」ことは、ご寄附をして下さった方々のお気持ちを現地の子どもたちにつなぐジョイセフの役割と責任でもあります。「直接に手渡すのは当り前」と思われるかもしれません。お預かりしたランドセルをアフガンの子どもに確実に届けるのは、日本の宅配便のようにはいきません。アフガンは社会経済的インフラが整っていませんので多くの障害を越えなければなりません。非常に貧しい家庭が多いアフガンでは、親は子どもに鉛筆1本、ノート1冊が高く買ってあげられません。子どもたちはノートと鉛筆がないため、地面に指で文字を書いて学んでいます。片道5キロ~10キロの道のりを歩いて通学する学童は普通です。日本では小学校に行くことは当り前です。アフガンでは当り前ではありません。そのため、ランドセルを手にした子どもは、目を輝かせて喜びます。日本から贈られたランドセルを宝物のように大切に使います。ランドセルを背負って通学することが楽しくなります。親は子どもが嬉しそうに学校に行く姿を見て、子どもを学校に行かせる大切さを理解します。ランドセルが子どもと親の心の変化を起こします。

ジョイセフ⑤

(初めてランドセルを背負うアフガンの子ども)

 

 

ジョイセフ③

(ランドセルを手にするアフガンの子ども)

ジョイセフ④

(ランドセルの使い方について聞き入る生徒)

 

現地では、ジョイセフの共同実施団体であるアフガン医療連合センターが大活躍しています。そこのスタッフの非常に高い士気と責任感でランドセル配付が行なわれています。その原動力は、アフガンから遠く離れた日本の寄附者が、現地の相手の名前も顔の知らないにもかかわらず、寛大で温かい気持ちにより10年以上にわたって途切れることのない支援を続けていることへの感謝の気持ちと日本人への尊敬の念が醸成された結果です。アフガン内戦は2001年に終わり15年が経過しました。国際社会のアフガンへの関心は徐々に低下し国際援助も減少しています。「世界の最貧国のアフガニスタンを忘れないで」という現地からの声はますます届き難くなっています。寄附で支えられた活動は継続する力があります。2011年3月11日、東日本大震災が起きた直後、アフガニスタンから「日本と日本人は大丈夫か」というメールが届きました。その気持ちだけで十分に有難いと思っていたところ、アフガン医療連合センターのスタッフが少ない給料を削って日本の被災者へ数千ドル寄附金を送ってくれました。思ってもいなかった寄附金に驚きました。人間は助けていると同時に、助けられていることを改めて実感しました。

 

アフガン医療連合センターのババカルキル氏が来日した際に興味深い話をしてくれました。「現地でランドセルを配付しているある地域はタリバンの影響を強く受ており治安が悪かった。しかしランドセルには意外な効果があった。武力で制圧した地域はいまだに紛争が絶えないが、ランドセルを配付した地域は徐々に平和になり住民は安定した生活に喜んでいるというのだ。ランドセルは武器よりも強い」というのです。これも多くの寄附者に支えられた皆様のご理解とご支援の賜であると改めて深く感謝申し上げます。

ジョイセフ⑥ ジョイセフ⑦

(青空教室 ランドセルは机代わり)

ジョイセフ⑧

 

ジョイセフ

高橋秀行

業務執行理事