「医療科学」とは何でしょう?聞き慣れない言葉ですね。わが国の医療は、世界最高水準の平均寿命や高い保健医療レベルを達成し、われわれはその恩恵を受けています。しかしながら、高齢化、長期に治療薬が必要な生活習慣病患者の増加、さらには日進月歩の医療技術の高度化に伴い、医療にかかる費用は増加し続けています。また、わが国のどこに住んでいても同じレベルの治療を受けたり、医療から介護への連携がスムーズに行えるように、スタッフ数や施設を整備したり、あるいは、生殖医療、遺伝子治療、再生医療などの科学技術の進歩に伴う、個人情報の保護や、人間の尊厳などの倫理的側面への配慮も悩ましい問題となっています。

このように、現在の医療は、社会的な視点を抜きにして考えることはできません。医療と社会の間の問題を考えるには、医学だけでなく、看護学、薬学、そして、経済学、経営学、社会学等の人文・社会科学的な手法も必要です。公益財団法人医療科学研究所(医研)は、こういった諸分野を総括して「医療科学」と呼び、長期的・国際的な視野に立ってこれらの研究の促進に取り組んでいます。

具体的には、医研は自らが行う研究活動のほか、これら分野の研究者の育成や、書籍・学術誌発行、シンポジウム開催などの活動を行っています。最近では、人生の後半生に、個人の尊厳を尊重した納得の生を全うするために、個人・家族・地域・社会はどうあるべきか、医療者、ホスピス設立者、学者、患者等の多様な視点を一冊にまとめた書籍『人生の最終章を考える』(写真参照)を発行し、研究者や政策担当者から大きな反響をいただいています。また研究者の育成は特に重要な事業として取り組んでいます。設立以来現在まで、30名以上の研究員を輩出し、現在は、大学等の教授、准教授として研究・教育のフロントラインに立っています。

こういった事業の原資は寄付によって支えていただいています。わが国に住むすべての人に公平・平等に与えられるべき医療を、よりよい形で社会に提供することを考える「医療科学」が、公益に尽くしたいというお気持ちにサポートしていただけるのは、たいへんありがたく、また日本社会の成熟を反映するものとも考えております。今後も医研活動をご支援くださいますようお願いいたします。

 

公益財団法人医療科学研究所

医療とその関連諸科学の学際的研究・調査を推進することで、わが国の医療と福祉の発展を図ることを目的として活動しています。

http://www.iken.org/

 

医研

(2015年9月に医研が監修した書籍を発行しました(株式会社法研 刊)。)