トンボ王国は、1985年に高知県西部の四万十市(旧中村市)で産声を上げた、世界初の本格的なトンボ保護区です。目標は、総面積約50haの田黒池田谷(たぐろ・いけだだに)全域の保護区化ですが、2015年10月末現在の保護区エリアは本会、四万十市、WWFジャパンの購入地、借用地合わせても、まだ9ヘクタール足らず。それでも、池作りに始まり、除草や補修など積極的な手入れ作業継続の中で、当初60種類だったエリア内のトンボ記録種は77種に増加、1シーズンに確認された種類数も過去11年間60種以上を記録し続けており、2014年春には、国内外のトンボ学会から「日本一のトンボ保護区」とのお墨付きを頂きました。

そんなトンボ王国の歴史は、善意あふれるご寄付抜きに語ることはできません。法人組織設立の基本財産に始まり、保護区用地買取りや借用の資金、その整備に係る用具や材料に人件費、保護区内の展示館運営にも多額の寄付金が充てられています。これまでの総額は、およそ1億2千万円にも上ります。金銭以外にも、保護区内のスイレンやハナショウブなどの植栽植物、展示館の昆虫標本や生体(魚類など)も、その多くが全国各地からの寄贈品です。

_MG_8310ハナショウブ2012・6・3トンボ王国

ここまでなら順風満帆と言えるのですが、今、トンボ王国は存続の帰路に立たされています。最も深刻なことは、子供たちの生き物離れです。当地でも、最も昆虫に興味を持つ年齢と考えられる小学3.4年生の男子ですら、その半数近くがトンボに触れないというくらす学校も見受けられるほど。その影響もあり、保護区維持の主要な資金源となっている展示館入場者が激減しており、毎年100万円を下らない会員さんたちからのご寄付が、10年以上も本来の用地拡張ではなく、展示館運営など施設維持費に充てられています。加えて、温暖化による異常気象で、保護区内で渇水と洪水が頻発するようになったことに加え、周囲の民有林荒廃から常時出没するようになったイノシシによる施設破壊など、その対応作業量も増大しているにも関わらず、必要なスタッフ数すら確保できない状況に陥っています。

一方で、温暖化に起因する地球規模の気候変動は人類の存続すら危ぶまれるほど深刻化しています。

当地方においても、南方系の昆虫が増加しているなど、気候の変化は明白です。さらに近年では、二酸化炭素の20倍以上もの温室効果を持つというメタンの増加も危惧されており、当時活動していた90~95%の生物が短期間に絶滅したとされる、2億5千万年前のペルム期末期に似た状況とさえ言われています。今直ちに人類の英知を結集して、気候および生態系の修復に取り組まなければならないのですが、その大前提は多様な生物が生息する環境を肯定的に感じる人の存在であり、そのためには昆虫採集や魚捕りなど、子ども時代の楽しい自然体験が欠かせません。そこでトンボ王国では、20年ほど前から、多様で再生力に長けた生態系創出と共に、「生き物探しゲーム」や「親子トンボ捕り大会」といった自然体験メニューの立案と実施にも力を入れています。また今日、大半の生物や、その生息環境の保全に否定的な人はおられないはずで、人手によって生態系を豊かにしてきたトンボ王国の手法が広く認知されるなら、自然環境保全のジャンルに多くの雇用が生まれるところとなり、経済的疲弊で青息吐息の地方と呼ばれる過疎地域の再生にもつながるものと期待されます。

まだまだ多くの支援を必要としているトンボ王国ですが、人手による生態系保全の正当性を広めていくことと、子どもたちへの自然体験提供を推し進めていくことが、これまで物心両面で支えてくださった方々への、ささやかな恩返しになるものと確信しているところです。

_Q4A5353チョウトンボ♂+スイレン池2012・7・10トンボ王国

_Q4A6520黄スイレン+ショウジョウトンボ♂2013・7・13トンボ王国

公益社団法人トンボと自然を考える会

理事長 酒井 泰一

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