【標本はなぜ大切なのでしょうか?】

豊かで多様な生物相は、人類を含めた地球上の全生命体の存在基盤であり、人類の文化の源泉でもあります。しかし、守るべき生物の多様性は、人間の経済活用の影響をうけ、これまでにない速さで失われつつあります。生物多様性損失のスピードを正確に把握し、それを減速させるためには、生物多様性についての長年にわたる情報の集積が不可欠です。欧米諸国では、こうした情報を蓄積する自然誌研究が伝統として根付いています。我が国においても比較的最近になってこの分野への理解が得られるようになってきましたが、アジア地域では経済的利益に直結しないこの分野への理解度は依然として低く、多くの生物群について情報の不足が目立っております。

幸いなことに鳥類学については良質な情報の蓄積が例外的に見られます。それは当財団が所蔵し維持管理を行ってきた鳥類標本等のコレクションです。鳥類は食物連鎖の上位に位置する猛禽類などのように、環境劣化のバロメーターになりうる種を多数ふくむほか、大規模な渡りを行う種も多く、近年では感染症を潜在的に媒介する可能性のある生物として衛生学的にも注目されています。鳥類の生息状況に関する情報は非常に学術的価値が高いものです。当財団は近年、保有する生物多様性情報の整備・維持管理・拡充に努めてまいりましたが、これらに加え平成21年以降は「保有する情報の国際発信」を最重点課題として掲げております。また、保有する潤沢な標本資料を用い、形状や色彩の情報をデジタル化して国際的に共有するための新技術にも取り組んでおります。これらの活動を通して当研究所は生物情報学の分野におけるアジア最大の情報発信拠点になることを目指しています。当研究所が国際発信する生物多様性情報は、自然環境保全などグローバルな諸課題の解決に寄与することはもちろん、自然誌研究の本来の目的である、生物界のしくみの探究にも多大な貢献をなしうるものです。

 

【山階鳥研の経済規模と寄附の受入れ状況】

山階鳥研の27年度予算(経常収益)は約2億5千6百万円です。うち約20%にあたる5千万円がご寄附(会費を含む)です。多くの研究事業は、科学研究費補助金や民間企業の助成金などで賄われますが、これら補助金や助成金の使途には厳しいルールがあり、人件費や建物の修繕費に使うことは基本的に制限されています。一方、標本を学術的に価値のある標本として維持するためには標本収蔵庫の温度、湿度、光度を適切に管理することはもとより天井からの雨水漏れなどを防ぐ必要があります。その財源として重要なのが使途を指定しないご寄附(含む会費)なのです。ご寄附は私どもの学術研究を支えてくださる大切な柱なのです。

実例:1984年竣工の建物は老朽化しています。2009年の建物屋根部防水工事、2015年の収蔵庫屋上防水工事はともにご寄附によって実施可能となりました。心から感謝しています。

山科

 

日本で最大の鳥類に関する専門研究機関として、前身の山階家鳥類標本館の設立(1932年)以来八十余年、一貫して日本の鳥類学研究を支えてきました。その業績は世界的にも高く評価されています。

ホームページ http://www.yamashina.or.jp