「ほしいものは何もない。けれども、あの太鼓が今あったらどんなにいいだろう」――震災直後に、東北の避難所から聞こえてきた声である。

企業メセナ協議会は、芸術文化の振興と、これを通じた豊かな社会づくりを目指して事業を展開している。特定公益増進法人の資格を有し、企業や個人から募った寄付を、芸術・文化活動への助成金として交付しており、1994年より始めた助成制度で、これまでに125億を超える寄付金を受け入れてきた。近年は年間3~5億円ほどの寄付があり、それにより数多くのコンサートや展覧会、ダンスや演劇の公演、映画制作、アートフェスティバル等が実現している。

2011年3月には、「東日本大震災 芸術・文化による復興支援ファンド(GBFund)」を設け、被災者・被災地を応援する芸術・文化活動、被災地の有形無形の文化資源を再生する活動に対して支援を続けてきた。同ファンドの趣旨に賛同する方々から、すでに1億5,000万円もの寄付をいただき、250件の活動に助成を行うことができた。とりわけ、東北各地のバラエティに富む祭りや郷土芸能は、地域コミュニティの礎を成すもので、不自由な生活を余儀なくされる中でも、いち早く、夏祭りの実現を願い、流失し損壊した祭り道具を調えることに尽力した人たちがいる。多くの皆様からのご寄付があったお蔭で、その気持ちに寄り添うことができた。あらためて、御礼申し上げたい。

メセナ①

(GBFund採択活動:磯草虎舞保存会)

 

芸術・文化は、経済的な豊かさに依って立つ贅沢品などではなく、我々のアイデンティティであり誇りであり、コミュニティの縁となり、歴史を後世に伝え、現代を映し出す鏡となるものである。時代に先駆けて新たな価値を提示し、人々の創造性を喚起することでイノベイティブな経済を生み出す原動力となるものだ。したがって、芸術・文化への寄付は、未来を拓く社会的投資なのだといえる。

さて、2020年には東京でオリンピック・パラリンピックが開催される。実は、スポーツの祭典であるとともに文化の祭典でもあり、2016年秋にリオデジャネイロ・オリンピックが終了する時から、次の開催地では「文化プログラム」に着手することが求められている。それも東京に限らず、オールジャパンでの取り組みだ。日本は各地に個性あふれる文化が息づいている。地域に伝わる民俗芸能や伝統工芸、地勢や気候に沿う暮らしぶり、衣・食・住も含めた文化の素晴らしさ、世界の目を集める機会を捉えて、日本文化の多様性を発信するとともに、各地の文化資源をいっそう磨いていきたい。そこで、協議会では昨年来「2021 Arts Fund」を設けて、2020年より先に向けた文化創造への寄付を促している。地域に活力をもたらすクリエイティブな人材の育成、ふるさとの文化を醸成する取り組み、多方向性ある国際的な文化交流など、寄付者のさまざまな思いをかたちにするファンドである。

2020年を機に、日本の多彩な文化が輝き、活力ある地域社会がつくられていく。その連なりが「創造列島(Creative Archipelago)」となり、未来につなぐレガシーとなるのではないか。寄付を通じた社会創造に、皆様にもご参加いただければ幸いである。

メセナ②

 

 

企業メセナ協議会は、企業による芸術文化支援(メセナ)活動の活性化を目的に1990年に設立された、日本で唯一のメセナ専門の中間支援機関です。企業メセナの社会的意義を発信し、文化振興の基盤を整備するために、調査研究、顕彰、助成、情報誌の発行、コンサルティング、国際交流等の事業を多面的に行っています。