by 岩内 » 2014年12月31日(水) 19:58
「公法協事務局」様、
ご教説ありがとうございます。
「FAQの注で『就任の承諾をした日が原因日付』と記載されているのは、就任承諾が選任日より後のケースを想定している」ということですね。
それはつまり、少なくとも内閣府のFAQ担当者の一人は、“承諾は選任の後”が普通だと理解しているということですね。内閣府の公式見解ではないかもしれませんが、恐らくこういう記述は、法人法体系を熟知・理解している者が担当しているはずで、役所としての正しい見解が披瀝されているものと思われます。
では、ものごとの道理として“委任の成立で、受諾は選出の後”という大原則に即すと、理事改選時の手順はどうなるでしょう。簡略化のため、全理事の任期満了退任、全理事新任の定評時を想定します。
そうすると、定評終結時には全前理事が任期満了退任、全新理事は選任されただけの状態になります。その後、法人代表〇〇名で選任通知を発送→これを受けて個々別々に△△宛就任承諾書を提出→承諾書の受理が理事定数に達した時点で新理事会が成立(必ずしも全員の承諾を要しない)→招集権者の□□が既承諾者宛新理事会を招集→代表理事選定(待ってました!とばかりに「被選者は直ちに席上就任を承諾した」などというはしたない議事録は作らせず、)→(つつましく)後日◇◇宛承諾書提出、これで委任関係が成立して新代表が就任、変更登記原因発生→新代表が登記申請となります。
この手順で、定評終結以後個々に“当選通知”を受け取った新採理事たちが、いったい誰が、何時、誰宛に理事会招集通知を出すべきか、公式に知る筈はありません。事務的実務は使用人の事務担当者でできますが、法的に正当な役員としての権限を行使しての合法的な招集、議事はできません。岡部さんらは安易に「ここは本則に戻って各理事が、云々」と仰いますが、自分以外の新理事がいつ承諾書を出したか知る由はありません。事務長クンダリの「承諾書がそろったので、招集名義を貸してくれ」に応じるのは無責任です。
そこで暫定結論、79条を素直に読んで、無条件に(理事再任か否かに関わらず)「退任した代表理事」に「後任の就任」まで、「なお代表理事としての権利義務を有」してもらう、つまり上記の〇〇、△△、□□、◇◇はすべて前代表理事とすれば、何の問題も生じません。
では、FAQに当初から明記されていた注記が、なぜ、これまで問題にならなかったのでしょう。それは法人法の骨抜き運用が通例化していたためではないでしょうか。
つまり、予め内定している役員候補に事前に承諾書を書かせ、審議・選任権を有するはずの評議員会は、理事会側から提出された役員候補名簿を取捨皆無で一括承認するしか能がなく、見事に一瞬の途切れもなく正当理事会が継続しているのです。代表理事にしても同じです。太田代表はどうせ再選されるんでしょうが、FAQ担当者のサジェスチョンに従って、ゆかしく「承諾は明日」とでもしようものなら、一晩理事資格を喪失しただけで純退任→改めて就任という手続きを強いられて代表権が途切れ、議事録公印押捺が無効となるのです! 79条の誤解を解けば何でもないことですが……。
評議員会が本当に法人統治権を発動して、理事会の意向と全く独立して、たとえがんじがらめの就任承諾付き理事会提出候補名簿があっても、185条の議案提出権を行使して候補者を加除して、独自の役員選任をしたらどうでしょう。あとでお断りに頭を下げるリスクを取ってまで事前就任承諾なんてできなくなるでしょう。まして席上承諾する出来レースの直後に理事会を開いて新代表理事を選定するために、内定理事が全員評議員会に臨席して「早く決めろ!」と評議員連をにらんでいるなんて光景はなくなります。選任結果が判明して初めて承諾を求める、という正道が開けるのです。こうして初めてFAQ子の常識感覚どおり“承諾は選任の後”があたりまえになります。
ここに至って、79条の正解、「代表理事」と「代表理事の権利義務を有する」ことを区別した、「代表理事」自体の退場→直ちに「代表理事の権利義務を有する」者の登場というしくみの理解が必要になるのではないでしょうか。