使用人兼務代表理事と利益相反取引

使用人兼務代表理事と利益相反取引

投稿記事by 社会の基礎 » 2016年10月27日(木) 10:49

(別の質問へのご回答に再質問の形で投稿したものとほとんど同じですが、埋もれてしまってお気づきになっていないかもしれないと思い、重複しますが再度投稿いたします)
代表理事が使用人を兼任することは、「理事が自己のために法人と取引しようとするとき」(法84条2号)として利益相反行為に該当する(したがって理事会の承認が必要)のでしょうか? この場合、利益相反取引は「使用人としての雇用契約の締結」なのか、それとも「使用人としての給与の支払い」のどちらでしょうか? ご教示いただけますと幸いです。
(ネットで調べると株式会社の使用人兼務取締役への給与の支払いは利益相反行為だと解説しているものが出ていました)
社会の基礎
 

Re: 使用人兼務代表理事と利益相反取引

投稿記事by 公法協相談員星田寛 » 2016年12月09日(金) 16:11

社会の基礎様 guest様(11月21日)

ご質問いただいてから1ヶ月余りたっており、ご返事が遅くなったことをまずお詫び申し上げます。またお二方のお尋ねは理事の使用人兼務ということで共通していると思いますので、難しい事案でご期待に沿ったものかわかりませんが一相談員としての個人的意見を申し上げることをお許しください。

1.代表や副代表の理事が使用人を兼務することについて
(1)まずguestさんの質問は、「理事が業務を行うこと(兼務すること)」となっていて、社会の基礎さんのお尋ねのように「使用人を兼務すること」となっていませんが、使用人を兼務することと同じ意味と理解して解説申しあげます。
 ただguestさんの質問の意図が「代表や副代表」という名称であるが、法律上は代表理事でも業務執行理事でない理事が業務を行うという意味だとすると、①平理事は業務を執行できませんので、②平理事が業務を行うということは使用人としてそれを行うこと(兼務すること)に他なりません。その結果この問題は「使用人を兼務する」ことで統一的に捉えることができるので、表題のような問題として考えることにいたします。
(2)次にこの使用人を兼務すること自体には特に問題ないかということですが、結論的には問題がないと思います。一般法人法とは別の法令ですが、ご存知のように法人税法の取扱いとして、同基本通達には役員が使用人兼務することを前提として、役員の報酬と使用人給与の取り扱いを定めています(同基本通達9-2-3,9-2-4他をご確認ください)。
ついては、場合を分けて考えてみると以下のようになると思います。
 A.平理事の兼務の場合、上記(1)のように平理事は業務の執行をできませんので、それを行う場合は、使用人という立場で行うこととなりますが、これは世間一般で一番よく行われていることと思います。このときは、業務執行権限を持っている代表理事乃至は業務執行理事のもとで従業員として業務を執行することになります。
 B.業務執行理事の兼務の場合、業務執行理事は、法律上一定の業務執行の権限を持っていますので、使用人を兼務する必要はないようにみえます。しかし「役員の職務権限規程」等により、業務執行理事については一定の権限しか与えられていない場合等があり、そのような場合には、すべての権限をもった代表理事より、与えられていない権限を従業員として執行することを許すときに、例えば事務局長を兼務することが行われます。これもよく世間で行われる例と思われます。
 C.代表理事の兼務の場合、代表理事は、法律上全ての業務執行権限を持っていますので、使用人を兼務する必要はないと思われます。ただ二人の代表理事がいて、「役員の職務権限規程」等により、1人には全面的な権限があるが、他の人は一定の権限しかない場合は、上記Bと同じ理由で、例えば事務局長を兼務することは考えられます。このような例も少数ではありますが散見されます(一人しか代表理事がいないのに、その代表理事が兼務する例があるかについては、寡聞にして知りませんが、そのような場合があった場合にどう法律上構成するのか、またその実際上の意味等について小職には分りません。教えていただければ幸いです。)。
(3) なお、guestさんの質問が「代表や副代表の理事」となっていて、法律上の代表理事なのかどうかがよく分かりません。単なる呼称であって法律上は平理事であれば、上記(1)(2)のAの問題となりますし、法律上の代表理事乃至は業務執行理事ということであれば、上記(2)のB.C.の問題としてご理解ください。

2.使用人兼務理事の報酬ならびに手続き
(1)使用人を兼務することの意味について、社会の基礎さんよりは、一般法人法84条2号の利益相反行為(理事が自己のために法人と取引しようとするとき)にあたるかということですが、理事が使用人の位置につくというときは、理事が自己のために法人との間に雇用契約という双務ですが有償の取引をしようとするときですので、利益相反行為にあたると思います。ついてはご存知のように、重要な使用人の選任、利益相反取引にかかる理事会の決議等が必要となるものです(一般法人法90④,92)。
(2)さらにこの利益相反は、①「使用人としての雇用契約の締結」なのか、②「使用人としての給与の支払い」のどちらかという問いがあります。これについては、①と②を区別することにどういう意味があるのかが小職にはよく分かりません。というのは、雇用というのは「当事者の一方(労務者)が相手方(使用者)に対して労務に服し、相手方がこれにその報酬を支払う契約」と定義されているからです(民法623条)。従って①と②はある意味一体であり、無償の雇用契約は想定できません。そこで利益相反は①形式的には雇用契約の締結であり、②その結果として給与の支払いという実質的な事柄が生じるということになるかと思います。
(3)guestさんよりは「理事としての報酬(少額)とは別に、その事業に従事した期間についてその事業に対する給与を支払うことも金額が不相当に高額等でない限りは問題ないと考えている」ということですが、基本的にはその通りです。ただし次の点について注意が必要と思われます。
A.公益法人の役員の報酬については、認定法5条十三号により「(前略)不当に高額なものとならないように(後略)」とされ、同じく認定法20条により公表もされることになっています。そしてこの場合の報酬等には使用人給与は含まれませんが(ガイドラインⅠ―12)、定期提出書類のF表において兼務理事の使用人給与を分けて明示するようになっていますので、行政庁への届出や一般への公表に際しては留意する必要があります。
B.また「事業に従事した期間に対応した給与を支払う」と書かれていますが、これは雇用契約の内容次第で異なった形も当然ありえます。従業員の給与体系が決められており、兼務理事がそのテーブルの中にある場合は、月俸あるいは年俸で決められている場合が多く、必ずしも従事した期間に対応した給与ではないと思われます(もっとも従事した期間がこのようなテーブルの意味であればおっしゃていれば同じことになりますが。)。

小職の意見は以上のとおりですが、使用人としての自らの行為を経営者として監督するのであれば、ガバナンス・規律の面から、他の理事監事は一層慎重に監視監督することが求められ、また役員としての法人・第三者に対する責任の所在、ステークホルダーへの説明責任からも、法人の実情から合理的に説明できること、透明性に留意した権限規程給与等規程等の順守・適正な運営が求められるものと考えます。具体的な法人の状況に沿って監事、専門家を交えて理事会にて慎重に適正な運営を検討されることを提案します。
                                                                          以上星田寛
公法協相談員星田寛
 

Re: 使用人兼務代表理事と利益相反取引

投稿記事by 社会の基礎 » 2017年2月07日(火) 17:07

星田寛 様

ご回答、ありがとうございました。ご回答の中で、「代表理事の兼務の場合、代表理事は、法律上全ての業務執行権限を持っていますので、使用人を兼務する必要はないと思われます。」「一人しか代表理事がいないのに、その代表理事が兼務する例・・・があった場合にどう法律上構成するのか、またその実際上の意味等について小職には分りません」とコメントされている点について、質問者として補足説明いたします。
当方において想定しておりますのは、現在、専門技術的な仕事に就いてもらっている非常勤の職員(給与を支払っている)を、近いうちに、代表理事(非常勤)に選任するということです。当法人は、代表理事は一人であり、かつ非常勤です。代表理事の報酬は少額であり、代表理事就任後も、今の専門技術的な仕事は続けてもらって、給与を支払います。このような場合に、「使用人兼務の代表理事」という立場になるものと考えた次第です。法律構成上、その他問題点は、ございますでしょうか? もし何か留意すべきことなどありましたら、ご指摘いただけると幸いです。
社会の基礎
 

Re: 使用人兼務代表理事と利益相反取引

投稿記事by 公法協相談員星田寛 » 2017年2月22日(水) 15:26

社会の基礎 様

どのような視点、お立場で検討されているのか理解できませんが、私見を述べます。
すべての権限を有する代表理事が使用人となることを、法人の適正な組織運営としての枠組みとして一般法人法は想定していないと考えます。ガバナンスの視点から、その使用人としての働きを代表理事として監視・監督できないと考えます。また、他の理事・監事がどのように執行状況をフォローし監督するのか、妥当な統治体制・実務が難しいと考えられます。またなぜ代表理事としての報酬を少額にして代表者としての職務責任を要請することが妥当なのか、使用人としての職務と代表理事としての職務をバランスよく役割を担え、他の使用人との関係もどうかなど、一般的に疑義が生じます。
記載の内容について、小職にはこれ以上の理解を超えますので、具体的に弁護士に相談されるか、理事会において協議されてはどうでしょうか。
                                                                       以上星田寛
公法協相談員星田寛
 

Re: 使用人兼務代表理事と利益相反取引

投稿記事by 小せっかい » 2017年2月23日(木) 11:33

星田寛 様

何か大きな勘違いをされていませんか。
評議員は法人法173条2項で使用人都の兼務を禁止されていますが、理事に就いては何ら制限はないはずです、むしろ単に理事であることによって〔不当に高い〕給料を払うことを禁じ、正当な勤労に対する対価を払え、というのが法人法の基本理念でしょう。ほとんどの法人が役員報酬は抑制し、使用人として常勤役員の給料を保証しています。
ですから定期報告書の別表F(2)の②には「使用人を兼務する理事の給料手当」という欄があって、代表理事も平理事も区別なく払った額を記入するようになっています。
財団法人にしている美術館や博物館ではほとんど役員トップの理事長が使用人トップの館長として月給取りになっています。
より規制の厳しい学校法人など半分は理事長・校長兼務ですよ。
日本中支配している安倍総理が山口でアルバイトしてもみっともないか否かは別として違法ではありません。
小せっかい
 


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