by 鈴木 勝治 » 2016年3月31日(木) 16:07
びっくりポンさんへ
1.結論から申しあげると、総会に提出する議案の内容は、代表理事名で提案しなければならないと思います。
その理由は一般法人法§36③であり、そこでは社員が裁判所の許可を得て社員総会を招集する場合(§37②)を除き、
理事が招集すると規定されているからです。
因みに理事が社員総会を招集する場合には、理事会設置社団法人においては、社員総会の日時及び場所、目的である事項等を
理事会において決議しなければなりません(同法§38①、②)。
2.そうすると一般法人法の平成26年の改正により「社員総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の
内容は監事が決定する」と規定する同法§73①との関係が問題となるかと思います。特にこの改正の規定は、従来の監事の同意権から決定権に進化した(※)
だけに、決定権があっても提案権が理事(会)にあるのでインバランスではないかという疑問が生じるところです。
しかし実体的な決定権者と手続的な提案権者が異なることは、現在の社員総会の手続が上記のようになっている限り仕方のないことと考えられます。
(旧民法§59四のように監事に社員総会の招集権があったときは、実体と手続を合わせることができたかもしれませんが、一般法人法では監事には招集権は
ありません。)
※会社法の世界では「会計監査人の選任等の議案の決定につき、取締役等が監査役等に対して原案を提示することも認められない」とする見解が
通説と言われています。
→江頭憲治郎著「株式会社法 第6版」2015年有斐閣613頁参照
3.それでは監事の決定権は実効性がないものでしょうか。下記の理由からそんなことはないと思います。
①上記1.記載の社員総会の招集の決定の理事会には一般法人法§101①により監事にも出席義務があることから、その理事会において
監事(会)の意見を述べることができること。
②また監事には、理事(会)が社員総会に提出しようとする議案等について調査する権限があり、法令・定款違反等がある場合にはその調査結果を
社員総会に報告できること(同法§102)。
③さらに監事には、理事の法令・定款違反等の行為に対し差し止め請求ができること(同法§103)。
4.もっともせっかく監事(会)に会計監査人の決定権を認めながら、それをストレートに社員総会の議題とする手続規定を設けなかったということは、
やや整合性がとれていない感は残ります。
しかしこのことは監事に会計監査人の決定権があっても、会計監査人に対する報酬の決定は理事(会)に残されていて、従来通り監事には
同意権しかない(一般法人法§110)ことをみればわかる通り、監事にどこまで業務執行を認めるかといった難しい問題ともからんでいると思われます。
5.実務上は、監事(会)が会計監査人を決定し、それを社員総会の議題とするよう理事(会)に連絡すること等により、お互いに協力し合って
スムーズな執行を心掛けるということかと思います。さらにいえば、会計監査人の報酬決定は理事(会)側にあることから、そもそも人選にあたっても
理事と監事で会計監査人の報酬について協議しながら決定することが実務上要請されているといえましょう。
以上
by鈴木 勝治