by 相談員 鈴木 修 » 2020年11月03日(火) 03:48
ご照会の件について、次のとおりコメントさせていただきます。
①について
一般法人法153条3項二号の趣旨は、次のとおり説明されています(新公益法人制度研究会『一問一答公益法人関連三法』(2006年、商事法務)111頁)。
「設立者に剰余金または残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めが許されないのは、このような定めは、剰余金の分配を目的としない法人であるという一般財団法人の基本的性格に反するものであるし、また、設立者は設立時に一定の財産の拠出をする者であって、このような定めを許容すると、設立者が法人の資産に対する持分を有する仕組みに類似し、営利法人との区別が不明確となるからである。」
一般社団法人や一般財団法人は、準則主義によって設立される剰余金の分配を目的としない法人であり、営利法人ではありませんので、剰余金を分配するということを前提とはしておりません。
また、法人税法においては、一般社団法人・一般財団法人(公益社団法人・公益財団法人を除きます。)は、その行う事業の範囲に制約がなく、公益性を担保する制度上の仕組みも有していないことや、社員又は設立者に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは効力を有しないとされるなど一定の制約が課されているものの、残余財産の帰属先を社員総会等で決定できるなど、営利法人と実質的に同等の活動を行うことも可能な仕組みであると考えられるとして、非営利型法人(法人税法施行令3条)の要件を定めています。
(備考)立案担当者の解説については、以下の資料(287頁以降)をご参照願います。
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11122457/www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2008/explanation/pdf/P245-P351.pdf
②について
非営利型法人の要件(法人税法2条九号の二、法人税法施行令3条)のすべてに該当する一般社団法人及び一般財団法人は、特段の手続を踏むことなく公益法人等である非営利型法人となり、また、 非営利型法人が、その要件のうち、一つでも該当しなくなったときには、特段の手続を踏むことなく普通法人となります。
なお、非営利型法人から普通法人に移行した場合や普通法人から非営利型法人に移行する場合には、課税所得の範囲の変更に伴う調整措置(法人税法10条の3、64条の4)が適用されますので、注意が必要となります。