by 岩内 省 » 2015年4月21日(火) 13:47
「半可通」様、鈴木様、
苦心の段取りと、逐一の批評、面白く拝読しました。
登記の可否だけですと、要は内部手続き・資格に関わらず、登記印が押されていれば、通ってしまうと思います。登記所では、招集手続きの妥当性や議長の根拠が問われることはありません。しかし、法人法による法人自治の問題として考えると、鈴木さんのご回答には、このフォーラムでも以前指摘したテーマですが、前提となる基本的な考え方で納得のいかない点がございます。以下長くなり恐縮ですが、箇条書きにて改めてお尋ねします。念を押してご教示いただければ幸いです。
1.選任と承諾の後先について 立候補・選挙制のような法人では承諾が先立つこと明白です。しかし、身の丈に余る要人に役員依頼する中小法人では、万が一にも落選で顔をつぶすことのなきよう、選任後に三顧の礼を尽くすしかありません。内閣府もFAQⅡ-4-⑥の(注)1で「理事又は監事の任期の起算点は選任日となりますが、登記の原因日付は、就任の承諾をした日が原因日付とされ」ると、まず選任、そのあと承諾という物事の常識的手順を追認しています。
2.総論と各論、本則と細則、法規と内規 現場ではいずれも下位のルールが優先します。法定最低賃金が1000円でも、就業規則が1100円なら、「いかなる理由があっても」従業員は1000円では納得しません。役員定年が60歳であれば、法定任期は定時評議員会云々でも誕生日が優先します。まして法人自治を高らかに打ち出した新制度では、法人法に反しない限り、各法人においては定款が絶対です。代表理事に対して、93条1項に拠り招集権を、95条3項に拠り署名人を、任意に議長職を、それぞれ付与・指定している法人では、生きている限りそれを免れることは許されません(もちろん、「不在の場合は、云々」のただし書きがあれば別です)。最も重要な役員交代時にそれが守られないようでは、定款を定める意味がありません。「本則に戻れ」では法人自治の放棄です。
3.代表理事の基礎資格 前項の問題が生じるのは、ご回答中の「代表理事の権利義務者といっても、それは理事であることを前提としている」というような、もっともらしい俗説に起因するところが大と思えます。「理事のうち、2名以内を代表理事と」する(公法協定款32条2項)のように規定している法人では理事退任即代表理事退任で、役員改選の度に代表理事不在になる可能性がありますが、それこそ法人自治の問題です。しかし、法人法が求めているのは「理事の中から代表理事を選定」する(90条3項)ことだけ、すなわち選定時の理事資格を要求しているだけで、就任後は資格条件も任期も規定していません。したがって、法人独自に任期規定(任期1年とか60歳定年等)でもしていない限り、代表理事任期切れ退任、などという事態は現出しないのです。
4.79条 とりわけ法人法79条1項は、「代表理事が欠けた場合又は定款で定めた代表理事の員数が欠けた場合」は、辞任・退任した代表理事は、後任の就任まで「なお代表理事としての権利義務を有する」として、代表理事機能に途切れは生じないことを保証しているのです。79条1項に、「ただし、理事であることを要する」とか「ただし、理事再任されないときはダメ」という条件は一切ありません。つまり、代表理事は、1人の場合も複数の場合も、生きている限り無条件に、次が決まるまではやめられない、逆に代表印が押せない状況は決して生じないということを単純に示しているのです。それを、理事辞表を出せば代表辞任できるとか、理事再選されないと署名できないとか、複数制のときはこうだと複雑化させるのは無意味な謬論です。ただし、このケースでも、当該法人が代表印取扱等内規の類で「代表理事が辞任したときは、署名を禁じ、代表印を封ずる」とでもしていれば辞表によって議事録署名人の任も免れます。
以上、長くなりましたが、我々公益法人に所属する者は、営利基準の会社法から類推したり、登記所の事務要領におもねるのでなく、法人法に依拠すべきです。是非とも法人法を素直にお読みいただき、その条文だけで役員改選・登記がすっきり単純にできるようにご助言ください。私見によれば、法人法に準拠すれば、法人の代表者たる代表理事は、自ら再任されるか否かに関わらず、全責任を全うして跡を濁さず、後任に引き継げるはずです。
特に、無条件に代表理事機能の継続を規定している79条について、法人法体系のどこにも書かれていない、代表理事の権利義務を有するためには「理事である必要がある」などと言う勝手な解釈を排除することは、喫緊の課題だと思います。